ちなみに、日本も2015年に「我が国の北極政策」を発表した。そのなかで航路や資源の開発に取り組む姿勢を示しているが、中国に比べると出遅れた感が否めない。

北極をめぐる紛争を回避する
ルールづくりが急務

 最近では北極での軍事的活動も目立っている。

 北極における軍事力でもっとも優位に立っているのはロシアだ。ロシアは北極圏内にいくつも軍事基地を有し、2021年には北極圏の防衛を担う北方艦隊の潜水艦が氷を突き破る演習を行っている。

 一方、アメリカはこれまで北極への強い関心をみせてこなかった。砕氷船の保有数はロシアの10分の1にすぎず、北極圏内の軍事基地も1カ所しかない。しかし、トランプ大統領(当時)が2019年に「デンマーク領のグリーンランドを購入したい」と発言したことからもわかるように、北極に注目していることは間違いない。

 北極が不毛の地から大きな可能性を秘めたフロンティアとなったいま、この地が紛争の場とならないように、なんらかのルールづくりが急務となっている。