「元・日本一有名なニート」としてテレビやネットで話題となった、pha氏。
「一般的な生き方のレールから外れて、独自のやり方で生きてこれたのは、本を読むのが好きだったからだ」と語り、約100冊の独特な読書体験をまとめた著書『人生の土台となる読書』を上梓した。
本書では、「挫折した話こそ教科書になる」「本は自分と意見の違う人間がいる意味を教えてくれる」など、人生を支える「土台」になるような本の読み方を、30個の「本の効用」と共に紹介する。

「人はなぜ助け合うのか」人の心を進化論で説明する、面白すぎる学問Photo: Adobe Stock

人間を「俯瞰」して見よう

 進化論というのは、とても画期的で強力な理論だった。

 あらゆる学問のジャンルに影響を及ぼして、さまざまな新しい学問が生まれた。

 その中で僕がもっとも好きなのは、「進化心理学」というジャンルだ。

 進化心理学は、その名の通り、人間の心理を進化論で説明する学問だ。

 人間の心理にまつわることなら、「子どもがかわいい」と感じることから、「週刊誌がゴシップばかり載せている」ということまで、あらゆることが進化論で説明できる。いわゆる「認知バイアス」も、人間が進化の中で環境に適応するために生まれたものなのだ。

自分が悪いのではなく「脳」が悪い

 進化心理学の例を一つ出すと、人間が安定して維持できる人間関係の数は150人くらいだという説がある。それ以上の数の人間関係は、あまりきちんと気にかけることができないという限界が、どうやら脳にはあるらしい。

 その理由は、もともと人間が150人くらいの集団の中で暮らしていたからだ

 この数は、ダンバーという人が提唱したので「ダンバー数」と呼ばれる。

 ダンバーは、さまざまな霊長類の脳を比較して、大脳新皮質の大きさと集団のサイズが比例する事実から、この説を生み出した。

 人間は今ではもっとたくさんの人に囲まれて暮らすようになっているけれど、150人程度の集団で暮らしていた時期が遥かに長かったので、人間の脳はまだ新しい状況に適応していないのだ。

 こういう話を聞くと、どうだろうか。

たくさんの人の名前を覚えられなくても、しかたないな
自分のせいじゃなくて、人間がもともとそうなっているからなんだ

 と思って気がラクにならないだろうか。

 僕は基本的に、「自分の今の状況は、自分の責任じゃなくて何かのせいなのだ」と思わせてくれる思想が好きなのだ。