生前贈与#18Photo:PIXTA

2018年7月、相続法がおよそ40年ぶりに大改正された。実は生前贈与に絡む新制度の創設や改正も多い。だが、安易に活用すれば遺産を巡る骨肉の争い“争族”をかえって呼び込む落とし穴もある。特集『生前贈与 駆け込み相続術』(全19回)の#18では、贈与に関係する改正相続法の中身を解説する。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)

「週刊ダイヤモンド」2021年12月18日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

残された配偶者のすみかを死守!
自宅を遺産分割の対象外に

 改正相続法の目玉とされる新制度が、二つある。まず2020年4月に施行された、夫に先立たれた妻が遺産分割後も住み慣れた自宅に住み続けられる権利である「配偶者居住権」がそれだ。

 配偶者居住権は本来の目的と異なる相続税の節税術として活用されている(詳しくは特集『死後の手続き お金の準備』の#9『現金の少ない地主が土地を奪われる!改正相続法「5つのリスク」の正体』を参照)が、これに並ぶ改正相続法の目玉と位置付けられているのが、生前贈与に絡む新制度「居住用不動産の贈与の持戻し免除の推定規定」(19年7月に施行)だ。

 分かりやすく言うと、結婚から20年以上の夫婦であれば、自宅を妻(夫)に贈与しても遺産分割の対象から外すことができるようになった。

 その意味するところは、いわゆる“争族”から妻のすみかを守ることにある。例えば、下図のように夫が再婚者で先妻との間に子がいるケースや、実子でも生活に困窮している場合など、遺産分割で後妻(母)が住む自宅不動産の売却を求めることは少なくなかった。新制度はそんな悲劇をなくそうというわけだ。

 次ページでは、この新たな制度を理解する上で“前提”となる、自宅贈与または遺贈(遺言による贈与)の基本をおさらいし、そこに潜む危ういわなを解説しよう。