生前贈与#12Photo:PIXTA

生前贈与がダメになる――。そう聞いて「駆け込み贈与」に走る人も少なくない。だが、ちょっとだけ待ってほしい。相続税対策としての贈与が必要な人は少数派。相続税のイロハを知らず、下手に贈与すると逆に損をしかねない。特集『生前贈与 駆け込み相続術』(全19回)の#12では、贈与活用の前提となる相続の基本とその算出法を見る。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)

「週刊ダイヤモンド」2021年12月18日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

下手に生前贈与をすると
無駄な税金を払うことも

 相続税は、なにも全員が全員に課せられるわけではない。確かに本特集#5『主要168駅「相続税額」試算リストを大公開!首都圏・関西・名古屋の3大都市圏を網羅』でも見たように、大都市圏にちょっとした持ち家があり、かつ「2次相続(両親が死亡した際の子への相続)」であるならば、資産家ならずとも相続税が課せられる可能性がある。とはいえ、それでも少数派であることには変わりない。

 そして、相続税の最高税率が55%であることから、「財産の半分以上を相続税として納めなければならない」という誤解をしている人は意外と多い。

 だが、相続税には、相続財産が多いほど税率が上がっていく累進課税が採用されており、10%から55%まで段階的に高くなる仕組みになっている(下表参照)。

 つまり、将来的に生前贈与がダメになるかもしれないからといって、相続税対策として贈与に駆け込んでも“無駄骨”に終わるどころか、不必要な贈与税を納めるという最悪の結果を生む可能性も十分あるのだ。

 贈与を検討する前段階として、わが家にどんな財産がどれだけあるかを把握し、かつ主要な控除制度の中身を知ることが必要不可欠なのだ。次ページから主だった控除制度を見ていこう。