人事上の部下との接点がまったくない!?アジャイル組織の2つの課題

 MSDは、旧万有製薬がグローバル製薬企業であるMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の傘下に入った後、2009年に同社がシェリング・プラウと統合し、日本法人も2010年にMSDと名称変更して再スタートしています。

 同社は、意思決定のスピードを上げるアジャイル組織への移行にともない、もともと実施していた1on1を、さらに強化しました。

 これまでの階層的な組織によるトップダウンでは、変化に対応しきれなくなった時代。それに対応したアジャイル組織は、既存の組織の枠を超えて、それぞれの専門性を持ったメンバーで組織されます。スクワッドと呼ばれるチームには部署を超えて、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーが集まり、お互いの業務を理解したりサポートしあうことで業務がスピードアップすると同時に、各人の成長を加速させるメリットが期待できます。

 ただ、その半面で難しいのは、マネジャーにとって人事上の部下たちがさまざまなスクワッドに散っているため、日々、どういう業務をしているかがわからない状態になることです。しかも、顔の見えない部下を評価、育成しなければなりません。

 そして、もう1つ明らかになった課題は、従来組織と比べてキャリアの行方が見えにくくなったことでした。

「“キャリア”と言うとどうしても昇格やポジションを思い浮かべる社員が多く、もう少し広い意味での自分なりのビジョンを考えてもらいたいと考えました」(人事責任者/同書202ページ)