タイの投資委員会(BOI)が発表したある方針が、進出しようと考えている日本企業の間で話題になっている。

 その方針とは、外資による投資の優遇制度を大幅に見直すというもの。これまでの、バンコクから離れるほど法人税減免などの恩恵が手厚くなる「ゾーン制」を改め、今後は産業別の優遇制度に切り替えるという。年明けにも確定し、詳細が正式に公表される予定だ。

 タイはこれまで国をあげて外資を誘致してきた結果、自動車産業を初め、多くの日系企業の製造拠点が集積している。

 その存在感は大きく、進出している企業数はバンコク日本人商工会議所の会員だけで1300社、会員以外を含めると、その数は6000~7000社を超える。

 昨年の洪水で撤退した企業もあるが、それでも、中国、米国に次いで3番目。日本企業にとって、タイは重要な製造拠点となっているのだ。

 だが、経済の発展に伴って、現在タイでは「年々労働者の確保が難しくなっている」(若松勇・日本貿易振興機構〈JETRO〉海外調査部アジア大洋州課長)。じつはタイの失業率は1%を切っており、企業にとってはなかなか人手が集められないことが深刻な課題なのだ。

 さらに、相次ぐ最低賃金の上昇も追い打ちをかける。インラック政権は「最低賃金300バーツ上昇」を掲げており、今後は人件費上昇によるコストアップが懸念されている。すでに近隣国へシフトし始めている労働集約が他企業も多い。

 BOIの政策転換は、こうした状況を受けたもの。つまり、労働集約型の産業ではなく、より高次の産業をタイで根付かせようというわけだ。

 詳細は決まっていないが、これからは再生可能エネルギーやバイオ、医療など付加価値の高い産業を優遇していく方針に転換していくと見られている。