中国の検察院が「逮捕を認めたという声明を発表」した

 予兆はあった。逮捕前日にあたる26日、中国浙江省温州市の検察院が「犯罪容疑者周焯華を首謀者とする越境賭博犯罪グループ」の逮捕を認めたという内容の声明を発表していたからだ。そう、それは「逮捕状を出した」ではなく、公開声明という奇妙なものだった。さらに、それを受けて同市公安局のSNS公式アカウントが、周CEOを名指しして「早期に自首して寛大な処理を受ける」よう「呼びかけ」た。なんともモヤモヤする歯の奥になにかが挟まったような話ではあったが、「相手がマカオ人だからだろうか?」と臆測が広まっていた。

 マカオも香港と同じように、原則は一国二制度下にある。このため、原則上は中国国内の公安が直接マカオに乗り込んで逮捕することはできないとされてきた(香港よりもずっと早くから中国化を受け入れてきたマカオゆえ、あくまでもカッコ付きであるが)。そのため、今回のマカオ警察が周CEOを逮捕したのは、温州市公安局の意向をくんだ代理逮捕なのではないか?という声も上がった。しかしマカオ警察はそれを否定し、あくまでもマカオ当局によるこれまで2年間の捜査の成果であり、周の容疑はマカオにおける違法行為であると強調した。

中国国内で稼いだ金が香港&マカオに流れ込む

 マカオでカジノが合法化されたのは1847年と古い。1999年にその主権がポルトガルから中国に返還されてからも、マカオは中国全土で唯一、カジノ運営が合法とされてきた。

 中国が豊かになり、香港やマカオとの往来が以前ほど厳しくなくなると、どっと中国から観光客が押し寄せるようになった。香港ではブランド商品や高級品の“爆買い”や不動産購入が話題になる一方で、マカオでは当然ながらカジノが人気アトラクションだった。そして、中国国内で稼いだお金を持ち込んで財テク・あるいは海外資産化するための手段として、「表(不動産や投資)の香港、裏(カジノ)のマカオ」ともいわれるようになった。

 だが、2013年に習近平政権が誕生し、通称「ぜいたく禁止令」が発令され、汚職の取り締まりも厳しくなって、以前ほど派手な資金持ち込みや爆買いはできなくなった。それでもやはり、香港での不動産投資、そして保険加入という形での資産移転の手段は尽きなかったし、同様にマカオを経由したマネーロンダリングはその手段がさらに巧妙になっただけで、途絶えたわけではなかった。