本を読むのが得意だと思われることが多い要約者自身も、もっと読解の精度を上げたいと常に願っている。このレビューを書き終えたら、さっそく紙1枚に取り組んでみたい。同じように読解の力を上げたいと思っている方に、広くおすすめできる一冊だ。(しいたに)

本書の要点

(1)著者が提案するのは、「紙1枚の読書法」だ。本の内容をA4用紙1枚のフォーマットにまとめるだけで、本を読めるようになり、考え抜くことができるようになる。さらに、内容を忘れないようになり、その結果人に説明できるようにもなる。
(2)インプットのみ、読みっぱなしといった自己完結オンリーの読書には限界がある。なぜなら、知識とは本質的に他者との関係性の中で創造されるからだ。
(3)紙1枚の読書術は、「時間」「空間」「人間」の3つの軸の自信を育ててくれる。

要約本文

◆「紙1枚」にまとめる読書術の本質
◇なぜ、いま読書が必要なのか

 現在は、読書を起点とした学習観自体が危機に瀕している。背景には、スマートフォンの普及と、動画や音声による効率的なオンライン学習手段の一般化がある。こんな時代に、面倒で非効率な読書は必要なのだろうか?

 この問いに答えるために、著者はダニエル・カーネマンの著作、『ファスト&スロー』(早川書房)から、次の2タイプの思考法を紹介している。

「ファスト」思考=システム1=「とびつき」思考、「浅い」思考、「茫然」思考

「スロー」思考=システム2=「めんどくさい」思考、「深める」思考、「没頭」思考

 デジタル全盛の現在、漫然と生きていると、浅いファスト思考ばかりがどんどん強化されていってしまう。この思考は、深く考えないで済ませられることを好むため、次第に私たちから「考える習慣」自体を奪っていく。

 ビジネスは答えのない世界だ。お手軽なオンライン学習や、浅いレベルの読書で得られるような答えは役に立たない。あれこれと試行錯誤を積み重ね、スロー思考を全開にして、ようやく突破口を見出すことができる。