明晰夢の可能性を探る
明晰夢を身体活動以外のことにも応用できる可能性はありますか。
はい。多くの人が明晰夢をうまく利用して、悪夢を止めるのに役立てています。また、創造性や問題解決が求められる仕事に就いている人たちは、夢のなかでそのようなスキルをトレーニングすることで、実力をつける恩恵を享受できます。実際、私は複数の企業から委託を受け、夢を通じてより創造的になる方法についてワークショップを実施しています。
私の明晰夢の研究に参加した被験者の1人は、ビデオゲーム・プログラマーの仕事をしています。彼はゲームを創作する前に、新作ゲームについて夢を見ます。モンスターの夢を見て、夢のなかでモンスターたちとプレーし、その反応を確かめることもあるでしょう。つまり、夢をシミュレーションとして使い、本業に役立てているわけです。
明晰夢が見やすくなるような薬剤はありますか。
もしも明晰夢を見られるようになる錠剤が手に入れば、だれもが飲みたいと思うはずです。それほど明晰夢を見るのは楽しいことだと思います。現在のところ、そのような錠剤はありませんが、研究者たちは明晰夢を促進する可能性のある物質をいくつか調べています。
明晰夢の分野で最も有名な研究者であるスティーブン・ラバージは、ドネペジルという物質を使った研究を行っています。この物質には明晰夢の頻度を増加させる効能があるようです。
もしも私が夢のなかで腹筋運動をすれば、筋肉隆々になるでしょうか。
その答えは「イエス」でもあり、「ノー」でもあります。ただ夢を見るだけで、実際に腹筋が割れることはないでしょう。ただし調査結果によれば、自分が運動している姿を思い描くことで、特定の筋肉を強化することは可能とのことですから、腹筋運動の夢を見ない場合よりも、腹筋は強化されるはずです。概して、覚醒している時の生活を改善したければ、夢はトレーニングに最適な場所といえます。
それはスピーチをするといった課題にも当てはまりますか。
明晰夢を見ている最中では、どのようなスキルであっても繰り返し練習することが可能です。夢のなかでのリハーサルによってスピーチが改善するかについては、経験的証拠はありませんが、事例としては、明晰夢を利用して大切なプレゼンテーションの準備をした人たちがいると聞いています。
Daniel Erlacher
スイスにあるベルン大学の講師。スポーツ科学を担当。
編集部/訳
(HBR 2012年4月号より、DHBR 2013年1月号より)
Practicing in Dreams Can Improve Your Performance
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