「面白いテレビ番組って何?」
経済学の観点で考える

 意外と思われるかもしれませんが、経済学の観点で見ると「面白い番組」と「マンネリ」は合わせ鏡のように本質的には同じものになります。資本主義経済下でのおいしいカップ麺は日清食品の「カップヌードル」で、おいしいスナックはカルビーの「ポテトチップス」で、おいしい外食は吉野家の「牛丼」です。

 つまり長寿商品とは、「変わらないからいい」と消費者が望む商品なのです。

 では、偉大なるマンネリ商品があれば経営が安泰なのか?というとそうではありません。実際に日清食品も毎月のように新しいカップ麺を出しますし、カルビーも毎月新しいポテトチップスを発売します。

 その理由は、マンネリ商品は10年ぐらいのスパンで考えれば経営の柱になりますが、30年のスパンで見たらマンネリ商品への過度の依存は経営の縮小につながるからです。

 すごくシンプルに言えば、マンネリ商品に10年ぐらい先まで依存しつつ、新陳代謝で常に新しい何かを仕込んでおかないと、テレビも面白くはならないのです。

 そこで、テレビ業界では番組改編という新陳代謝が行われるのです。しかし、ここ十数年、テレビがつまらなくなってきた結果として、業界全体でマンネリを重視する傾向が強まってしまいました。

 これは経営が苦しくなった企業と同じ現象で、収入が減って苦しい時期には経営リソースをマンネリの主力製品に集中するようになるのです。

 その象徴ともいえる現象が起きたのが、日本テレビの人気番組『笑点』でした。5年間大喜利メンバーを務めた林家三平さんが降板することになったニュースが「わずか5年で交代」と報じられましたが、本当はその感覚のほうがおかしい。若手の落語家で面白い人がたくさんいるのだから、テレビ界に勢いがあった頃の番組改編の感覚ならば、レギュラーメンバーは2年に一人ぐらいが入れ替わり、10年たつとほぼ全員が一新しているぐらいの新陳代謝が普通です。

 私が活動している大企業経営の世界では、「キープヤング」といって全盛期に経営陣が次世代にバトンを渡し、役員の平均年齢が若い企業の方が経営はおおむねうまく行っているものです。

 本来はNHKの場合、民放と違い「長期的に経営が苦しい」という状況ではないのですから、番組の刷新は民放以上に積極的にやればいいのです。実際、『あさイチ』にしても『ニュースウォッチ9』にしても、NHKの場合、番組の顔は民放と違って積極的に新陳代謝を行っています。

 朝ドラや大河ドラマも新陳代謝に工夫をしており、最近人気を盛り返しています。

 現在放送中の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』は長年のルールを良い意味で壊す形でヒロインを3人に設定して、ドラマのペースも従来の半年というよりは実質的に2カ月ごとに新しいドラマとなる感覚になっています。イチ視聴者としては上白石萌音さんがこの先、老け役で再登場するようなさらに新しい展開を期待していますが、それはまた別の話です。