ウクライナ国境に大軍を
なぜ「今」集結させたのか

 しかし、「なぜ今大軍を集結させているのか」を理解するのは難しい。

 筆者は、「米中覇権戦争が激化していることと関係がある」と考えている。

 どういうことか?

 現在、中国による台湾侵攻の可能性が取り沙汰されている。

 プーチンは、「米国は、中国との戦いに資源を集中させたいはずだ。ウクライナまで手が回らない」と考えたのだろう。だから、「今なら米国から譲歩を引き出せる」と。

 ここで言う「譲歩」とは、「ウクライナをNATOに加盟させない法的保証」のことだ。

「この要求をのめばウクライナに侵攻しないが、のまなければ侵攻するぞ!米国は、ロシアと中国、両方と戦えないだろう」と。

 昨年12月8日、バイデンとプーチンのオンライン首脳会談が行われた。さらに今年1月10日~13日にかけて、米ロとNATO-ロシアの協議が開かれた。

 しかし、合意には至っていない。つまり、米国もNATOも、「NATO不拡大の約束」をしなかったのだ。

 理由は、「NATOに加盟するかどうかは、ウクライナ自身が決めるべき問題だから」だ。