ワクチン接種の記録から親を捜す

 しかし、「店の前で遊んでいた息子が突然姿を消した」という孫さんの息子のケースと違い、劉さんの手元には生まれた時に受けたワクチン接種の記録書類があった。そこから劉さんは、自分がさらわれたのではなく、親に売られた可能性もあると考えた。それでも彼は血液バンクに登録して血縁者を探す一方で、その接種記録に残っていた父親らしき人物の名前をネットで検索してみた。

 血液バンクでは結果は得られなかったが、ネットが答えをくれた。彼が暮らす河北省のお隣、山西省大同市のある企業経営者の名前と一致したのである。それは、養母の親戚が覚えていた、養父母が彼を「買った」土地に近い地名でもあった。劉さんが勇気を振り絞って企業登記資料にかかれていた電話番号に電話をして名乗ったところ、相手は「かけ間違いだ」と電話を切ってしまった。

 だが10分後、その男性から電話が入る。そして、素直に自分が劉さん(ワクチン記録簿の本名は「丁晶」)の父親であることを認めたという。その時、実父は劉さんを手放した時、「一銭もお金はもらっていない」と言ったが、その後、実際には赤ん坊と引き換えに6000元(当時約8万5000円)を受け取っていたことが明らかになる。実父はそのお金を結納金として実母の家族に渡し、彼女と結婚したのだった。

 しかし、実父と実母はその後、劉さんの弟にあたる男児をもうけたが離婚。今はそれぞれに家庭を持ち、劉さんには血のつながった弟妹4人がいることもわかった。