「親捜し」動画から実の両親に会えるまで

 そうして劉さんは「親捜し」動画をアップしてからわずか2週間あまりのうちに、実父母とそれぞればらばらではあったが会うことができた。劉さんは河北省まで会いに来てくれた父親とその友人ら一行と食卓を囲む様子、そして母親とのツーショットとともに「きれいなお母さんだ」と自慢コメントをネットにアップしている。その様子に「親捜し」動画アップ以降彼を見守ってきた人たちは心からの祝福を送ったという。

 だが、現実は残酷だった。

 まず実父も実母も、劉さんの存在を今の伴侶には知られたくないと主張。劉さんがどちらかと一緒に「家族として」暮らすことはできなかった。さらに続いて1月中旬に突然、SNSに劉さんが「実母にブロックされた」という書き込みを流す。さらに実父がSNSに投稿したメッセージを公開。それにはこう書かれていた。

 「『キャラ作り、惨め売り、ネット乞食にたかる山ほどのアホたち』。突然受け取ったコメントだが、考えてみるとたしかにそのとおり。おれはもう返事しない。もう寝るぞ」

 劉さんを見守っていた人たちの間で、「彼は二度捨てられた」と騒ぎが大きくなる。メディアの取材を受けた実の両親は、劉さんがそれぞれ「今の伴侶と離婚」するよう、また「自分のために家を買ってくれ」と「迫った」と語った。記事が公開されるや、劉さんに対する激しい非難が渦巻き、劉さんのSNSは攻撃にさらされるようになった。劉さんの友人によると、この時期にそれまでずっと劉さんを見守ってきてくれた人たちが「見損なった」と彼をブロックしたことが彼に打撃を与えたという。

 そして、劉さんを心配して「杭州に遊びにおいで」とSNSで声をかけた友人に「いつか行くから」と言い残し、南方・海南省の三亜市に向かう。そして「大好きな」海岸で海を見ながら薬を飲んだ。彼のSNSには、長い長い遺書が残されていた。杭州在住の友人はそれを目にした時すぐに異常に気づき、以前現地を訪れた彼を案内した別のSNS仲間に連絡したが、時すでに遅し。発見されて病院に運ばれたが、助からなかった。