また、症状によっては新薬を選択したほうが効果的な場合もあります。たとえば、オミクロン株の感染者に多くみられる「喉の痛み」に対しては、漢方薬より新薬のプレドニゾロン(副腎皮質ホルモン薬)を短期間使ったほうが、速効で顕著な効果が得られます。

 コロナウイルス(RNAウイルス)は、短期間で変異を繰り返すタイプの病原体なので、今後も変異は続くでしょう。しかし、ほとんどの場合、変異を繰り返すうちに弱毒化する傾向がみられることから、数年後には普通のかぜ(感冒)と変わらない疾患になっていくと予想されています。それまでの間、ウイズコロナを実現し、医療体制のひっ迫、ひいては世の中の経済活動を早急に立て直すうえでも、漢方薬は重要な切り札になると考えています。なお、漢方薬にも副作用はあります。これについては拙著を参照ください。

(監修/医療法人徳洲会日高徳洲会病院院長・医学博士 井齋偉矢)

井齋偉矢(いさい・ひでや)
1950年、北海道生まれ。医療法人徳洲会日高徳洲会病院院長・医学博士。北海道大学医学部卒業。専門は消化器外科、肝臓移植外科で日本外科学会認定登録医。1988年から3年間、オーストラリアで肝臓移植の実験・臨床に携わる。帰国後、独学で漢方治療を本格的に始め、現在、日本東洋医学会認定専門医・指導医・名誉会員。2012年にサイエンス漢方処方研究会を設立、理事長として科学的根拠(エビデンス)にもとづいた処方を行う「サイエンス漢方処方」の普及に努めている。