漢方薬は、新薬のように直接ウイルスを攻撃するのではなく、服用した人の免疫系を活性化し、ウイルスに対する体の抵抗力を高める働きがあります。免疫に働く細胞の中でも、漢方薬は特にウイルスの感染した細胞を丸ごと破壊するキラーT細胞の活性を促進すると考えられています。

 さらに、ウイルスが細胞に入り込むのを抑えたり、ウイルスの感染を察知して免疫を迅速に立ち上げたり、免疫の暴走を抑えて感染症の重症化を防ぐなど、漢方薬は多方面から体の防御機構を高めます。

 人類は有史以来、無数の病原体に攻撃されてきました。しかし、今日まで絶滅せずに生き残ってきたということは、人類はすべての病原体から体を防御する力を持っていることを示しています。その防御機構を最大限に高めるうえで、漢方薬は役立つのです。

予防にも使えて、「ステルスオミクロン」株にも有効

 体の防御機能を高める漢方薬の効果は、ウイルスの種類を問わず速効で発揮されます。新型コロナウイルスの場合でいうと、オミクロン株および新たな変異株として注視されている「ステルスオミクロン」株にも有効です。また、今後どのような新種のウイルスが出現しても同様の効果が得られます。ここが新薬と異なる漢方薬の大きな特長です。

 もう1つ、漢方薬は新薬と違って、予防に使えるところも優れた利点です。感染拡大の最中でも、仕事などで外出しなければならない人、人と接触する機会の多い人は少なくないと思います。そうした人たちが、感染前から日常的に漢方薬を飲んでいれば、自分の身を守るうえで大変有利です。加えて、オミクロン株のように感染力の強いウイルスの場合、1人の感染を予防できれば、職場や家庭内でのクラスター防止につながり、社会全体の感染拡大にブレーキをかけることができます。

 それでは、オミクロン株の感染に対して、具体的にどのような漢方薬を使用することが最適なのか、症状別・場面別に紹介していきましょう。