障害者雇用支援という独自性の高い事業モデルで、安定成長を続けるエスプール。市場では一段の成長を占う上で、自治体や企業から事務作業を請け負う「広域行政BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)」サービスに期待する声がある。特集『今こそチャンス!日米テンバガー投資術』(全16回)の#14では、創業者である浦上壮平会長兼社長に、同事業を軸とした「次の成長戦略」の青写真を聞いた。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
リーマン危機後の債務超過を経て
「障害者雇用支援」で安定成長
ほとんどの日本企業がやりたくてもできない「値上げ」を実現できている企業がある。しかも、リーマンショック後には債務超過に陥っていた。その企業の名は、エスプール。今や市場で有望銘柄として期待を集める存在だ。「当時の反省を経て、環境変化の影響を受けにくい事業をつくってきた」。創業者の浦上壮平会長兼社長は、2010年からそんな障害者雇用支援サービスを手掛けてきた背景をこう語る。
同社は1999年設立。当初は大卒フリーターの就職支援から事業を始めたが、リーマンショックの影響で10年に債務超過へ転落。以来経営方針を大転換し、ソーシャルビジネス重視へとかじを切った。
新事業参入後は、障害者雇用を希望する企業に農園の区画を貸し出し、管理収入などを得るサブスクリプション型の事業モデルを確立。民間企業における障害者の法定雇用率は引き上げ傾向が続き、顧客先となる企業数は順調に拡大中だ。ESG(環境・社会・企業統治)重視の世相なども相まって、解約率は0.2%(21年度第4四半期)と極めて低い。
業態転換後は安定成長を続け、歩調を合わせて株価も上昇基調。22年11月期は売上高で10期連続、営業利益で7期連続の過去最高更新を見込む。
一段の株高を占う上で、鍵となりそうなのが、昨年立ち上げてから急拡大中の「広域行政BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)」というサービスだ。
これは自治体の問い合わせ対応や、事務処理業務などを代行する新規事業。市場でも「ニーズが顕在化する一方で白地の自治体も多く、しっかり利益が出れば次の柱になり得る」(大和証券の関根哲アナリスト)との声が上がる。
そもそも同社はなぜ、身体障害者ではなく、知的障害者や精神障害者向けの雇用支援にこだわるのか。そのための環境整備や投資はどのようなものだったのか。その上で、多くの日本企業が実現できずに悩む「値上げを可能にする価格決定権」を握っているのはなぜか。市場が期待を寄せる広域行政BPOサービスなどを軸とした「次の成長戦略」を含め、浦上氏を直撃した。