一つ目は、歴史の“書き換え”である。近年、豊田章男・トヨタ自動車社長やその側近は、豊田本家こそが正統であり、かつて経営と創業家との分離を画策した奥田碩・元会長や奥田氏がリスペクトしていた分家の豊田英二氏に否定的な姿勢を見せている。“中興の祖”である英二氏やグローバル展開の立役者である奥田氏の名はトヨタの歴史から排除されたのだ。

 替わって、トヨタの歴史を受け継ぐ正統性は豊田本家にあるというプレゼンテーションをことあるごとに展開している。豊田本家とは、創始者の佐吉氏、自動織機を発明した喜一郎氏、章男氏の父である章一郎氏、章男氏、(章男氏の)長男の大輔氏という豊田家直系の面々だ。

 二つ目は人事である。章男氏は役員を大幅に削減したり、組織の階層をフラット化したりすることで、自身が権限を掌握する中央集権化を進めてきた。

 自動車業界を襲う「100年に1度の変革期」を生き抜くため、迅速な経営を可能にすることが組織改革の大義名分である。

 だが、大輔氏が経営の表舞台に立つようになって以降、社内では「改革は企業存続のためではなく、豊田家の世襲のため」冷めた見方をする社員が増えて白けムードが漂っている。

 向こう10年以上先になるかもしれないが、大輔氏がトヨタ本体のトップに立った時のために、創業家の地位を脅かさない「側近体制」を構築しているようだ。