さらに吉田夕梨花は、序盤からロコ・ソラーレを優位に立たせる特技も持っている。相手が置いたガードに当て、左右の壁の間近までずらすウィックと呼ばれるショットだ。

 両チーム合わせて5投目までは、ハウスの前方に広がるフリーガードゾーンにあるストーンを、プレーエリアの外へはじき出せない。ルールに違反すれば動いたストーンは元の位置へ戻され、逆に投げたストーンはゲームから除外される。

 大会終了後に出演した民放のスポーツニュース番組。北京五輪でのベストショットを問われた吉田夕梨花は迷わずに「スイス戦ですね」と答え、仲間たちもうなずいた。

 世界選手権を2連覇中の強豪で、前日の1次リーグ最終戦では4‐8で敗れていたスイスを8‐6で撃破した18日の準決勝の最終第10エンド。極めて高い精度が求められるウィックを、吉田夕梨花は2投続けて成功させて日本へ流れを呼び込んだ。この一戦における吉田夕梨花のショット成功率は、実に99%を記録している。

セカンド・鈴木夕湖の魅力は
多彩なショットと「クレイジー・スイープ」

 吉田夕梨花に続くセカンドは、30歳の鈴木夕湖が務める。リードが作った流れに臨機応変に対応しながら、ガードストーンを置くショットや相手のストーンを弾くテイクアウトなどを繰り出し、後半へ向けてさらにゲームを優位に進めていく。

 さらに鈴木は、リードの吉田夕梨花とともに参加10カ国中で異彩を放つ働きぶりを見せ続けた。滑っていくストーンの前方をブラシで掃く、スイーパーと呼ばれる役割だ。

 シートの表面にはペブルと呼ばれる小さな氷の粒が無数にまかれている。スイーパーを務める2人がスイープを繰り返してペブルを瞬間的に溶かし、ストーンとシートとの摩擦を減らし、より遠くまで、より思い描く方向へと滑らせていく。

 鈴木は吉田夕梨花とともに、自分が投げるとき以外はスイーパーを担う。身長146cmの鈴木と152cmの吉田夕梨花がブラシをフル稼働させる姿は、小さな体と対極に映るエネルギッシュぶりから、外国勢を「クレイジー・スイーパーズ」と畏怖させている。