航空機との競合を意識した「のぞみ」が果たした役割は大きい。東京圏~大阪圏の移動に占める新幹線のシェアは、1970年代から90年代にかけてほぼ8割を保っていたが、90年代の航空自由化を受けて2005年には64%まで減少。しかし「のぞみ」の拡大により現在は85%まで回復している。

 2010年にJR東海が公表したリニア中央新幹線計画の見通しによると、2025年時点の東海道新幹線の輸送量は堅めの想定で431億人キロ、甘めの想定で503億人キロだという。ところが、新幹線の利用者数はリーマン・ショックが落ち着いた2010年頃から急増し、コロナ前の2018年度には563億人キロまで増加している。

 コロナ後の利用状況は見通せないが、仮に8割に減ったとしても(実際、年末年始は8割まで回復していた)当初想定の431億人キロを上回る計算で、「のぞみ」は飽和状態であり、リニアが必要というJR東海の主張は一応、今も保たれている形だ。

 しかしながら、大井川の水量を巡る静岡県との対立に加え、外環道の陥没事故から派生する大深度トンネルの問題、山岳トンネル工事で相次いだ崩落事故など、リニア開通までの道のりはまだまだ遠い。また名古屋まで開業しても当面の間は乗り換えが必要になる。

 2042年、「のぞみ」が50周年を迎えた時、東海道新幹線は一体どのような姿になっているだろうか。少なくともしばらくの間、「のぞみ」の役割が消えることはなさそうだ。