平安神宮(左京区)応天門に設置された茅の輪。朱塗りに緑のコントラストが鮮やか平安神宮(左京区)応天門に設置された茅の輪。朱塗りに緑のコントラストが鮮やか

6月も下旬になると、京都の神社では茅の輪を目にします。1年の半分が終わる6月30日の「夏越の祓」で、この輪を習わし通りにくぐって前半年に積もった罪や穢れを払い落とし、厄よけの「水無月」をいただいて、残り半年間の無病息災を願いましょう。(らくたび、ダイヤモンド・ライフ編集部)

素戔嗚尊の逸話に由来する「夏越の祓」

 京都が梅雨入りしてから2週間。第53回でご紹介したように、「アジサイにはやはり雨の日が似合うなぁ」としみじみ感じ入っています。突然米騒動が起きて、早口言葉みたいな「古古古米」がニュースに躍る一方で、連日のように夏日や35℃を超える真夏日が続いています。梅雨前線が行方不明の中、このまま空梅雨で暑さが増していくのか、コメの作柄も含め、とても気になるところです。

 第55回でお伝えしたように、7月の京都は祇園祭で明け暮れます。暦上、6月21日からは、1年の中で一番昼の時間が長くなり、夜の時間が短くなる二十四節気の「夏至」に入ります。6月30日には、2025年前半年の晦日(みそか/最後の日)を迎えます。

 この日には、この前半年に積もり積もった罪や穢(けが)れを払い、残り後半年を無病息災で過ごすために心身を整える「夏越の祓(なごしのはらえ)」が行われます。京都に限らず全国各地で守り継がれてきましたが、街中に神社がぎゅっと詰まっている京都では、お正月、お盆、大晦日と同じくらい大切な年中行事として、しっかりと人々の脳内に刻み込まれているようです。

 6月も下旬となると、神社には「茅の輪(ちのわ)」が設けられています。茅(ちがや)という細長いイネ科の植物で作られたこの輪をくぐることで、疫病の退散と無病息災を祈願します。そのルーツは、八坂神社のご祭神でもある素戔嗚尊(スサノオノミコト)の逸話にちなみます。

――あるとき、素戔嗚尊が旅の途中で一夜の宿を探していました。裕福な家の巨旦 (こたん)将来に頼んだところ、無下にされてしまいますが、貧しいけれども心の優しい兄の蘇民将来が温かく迎え入れ、もてなしてくれたのです。素戔嗚尊はお礼として「世に疫病流行すれば蘇民将来之子孫といい茅の輪をつけておけば免れる」と伝えます。蘇民将来が教え通りにすると、本当に疫病を免れることができ、蘇民将来の一族は末永く繁栄したのです――

 この逸話が元となり、疫病が蔓延しがちなこの季節、茅の輪をくぐって無病息災を祈願する風習がいまに至るというわけです。茅の輪のくぐり方や茅の輪が設置される期間は神社によって異なりますので、京都市観光協会のご案内をご参照ください。ではさっそく、らくたびおすすめの神社をご案内いたしましょう。

茅の輪を近くで観察すると、細い葉を束ねていることがわかる 茅の輪を近くで観察すると、細い葉を束ねていることが分かる