半導体・電池・EV 台湾が最強の理由#2Photo:Mailson Pignata/gettyimages

トヨタ自動車の倍の時価総額を誇るTSMCを筆頭に、台湾からは半導体の重要企業が続々と誕生している。だが産業史においては、台湾はかなりの後発国。米日韓に対し周回遅れで参入した半導体戦争に、なぜ台湾が今、圧勝しているのか。台湾の有力経済メディア「財訊」のコラボレーションによる特集『半導体・電池・EV 台湾が最強の理由』(全6回)の#2では、台湾の半導体48年全史を詳報。そこには日本が負けた理由も透けて見える。(台湾「財訊」 林宏達、翻訳・再編集/ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)

台湾は先進国に周回遅れで始動
「半導体強国」への48年の真実

 台湾の政府系シンクタンク、産業科技国際策略発展所の統計によると、2021年の台湾の半導体生産額は前年比25.9%という高い伸びを示し、4.1兆ドル(約16.4兆円)に達した。4兆ドルを突破するのはこれが初めてだ。

 この数字を支えているのは、半導体受託製造(ファウンドリー)の世界最大手であるTSMC(台湾積体電路製造)ばかりではない。台湾は他にも数多くの半導体産業に欠かせない重要企業を擁している(次ページに台湾半導体の最重要9社「神9」の一覧を掲載)。

「半導体について台湾に協力を求めている国が幾つあると思いますか」。半導体業界の国際団体、SEMIの台湾地区総裁、曹世綸氏はそう記者に問い掛けた。「ドイツ、フランス、ベルギー、ポーランド、オランダ、インド、オーストラリア……こういった国々が皆、台湾政府の部長(日本の大臣に相当)級との会合を希望している」のだという。

 半導体産業における台湾のパワーは、米国や欧州、その他多くの国が刮目するところとなっている。だが、実は台湾は半導体産業には遅れて参入した国であり、必要とするさまざまな資源も決して豊富ではなかった。それがなぜ、ここまでの発展を遂げたのか。その問いに答えるには、1974年から経緯を追う必要がある。

 自国の主たる工業製品はクリスマス用の電飾と廉価な自転車――。そんな状況だった74年に、台湾政府は「集積回路(IC)発展計画」を定め、半導体産業の振興に乗り出した。

 この時期、隣国の日本はすでに世界トップ3に入る半導体大国となっていた。