台湾では今、通貨である台湾ドルの上昇が進んでいる。日本はかつて円高を「企業収益を損なう」と嫌い、円安誘導政策を進めた。ところが今の台湾では、通貨高を自国経済のチャンスにしようという声が上がっている。台湾の有力経済メディア、「財訊」とのコラボレーションによる特集『半導体・電池・EV 台湾が最強の理由』(全6回)の#3では、日本が過去に逃した通貨高というチャンスに対する、台湾経済界の考え方を紹介する。(台湾「財訊」発行人兼社長 謝金河、翻訳・再編集/ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)
通貨高は良い?悪い?
台湾経済界から上がる声
過日の蔡英文総統との会食の場で、こんなことがあった。
機械業界の団体である台湾機械産業公会の元会長が蔡総統に、「台湾ドル高が進み過ぎないようにしてほしい。輸出は米ドル建てなので、売り上げが目減りしてしまう」と直訴した。
一方でそこに居合わせた大手機械メーカー、和大工業の董事長は「台湾には零細企業が多い。再編を促し、ドイツや日本に対する競争力を高めなければ、業界が受ける“圧力”はますます大きくなる」と指摘した。
この一見全く異なることを言っている二つの意見は、どちらも通貨が大きな意味を持っているという点で共通している。