本能的な恐怖は人間誰しもある
男女問わず危険なことは多々

 筆者がこの問題について考えるとき、いつも思うのは、男性も夜道などで怖い思いをしたことのある人は、それなりにいるのではないか、ということだ。ひと昔前には「おやじ狩り」が流行したことがあったし、無差別の殺傷事件は最近でも起こっている。犯罪発生件数が少ない日本とはいえ、「急に誰かから傷つけられるかもしれない」という恐怖は、本来誰にでもあるものだと思う。

 夜道で誰かにつけられているかもしれないと感じた場合や、夜道で急に人が近くにいることに気づいた際に感じる恐怖というのは、男女にかかわらず誰にでも起こる反応であると思う。

 たとえば、筆者はジョギングしている人の足音が急に背後で聞こえて、ビクッとしてしまうことがたまにある。なんの悪意もないジョガーであることはわかるのだが、急に走って近づいてくる足音を聞いた瞬間に頭をよぎるのは「刺されるかも!」という恐怖だ。この日本でそうそうあるわけがないことはわかっているが、それでも本能的に恐怖を感じてしまう。

 これがもし、実際に刺されたことがあったり、身近な家族や友人がそういう目に遭っていたとしたら、もっと怖いだろう。

90年代のヒットCM「愛だろ、愛」シリーズ、
現実では「警戒感」は隠しがち

 筆者は、夜道で知らない人からいきなり触られるといったタイプの性加害には遭ったことはないが、家の近くで声をかけてきた人につきまとわれたり、ナンパのような行為を無視したら揶揄されたり、罵声を浴びせられたりした経験はある(同じような経験をしたことのある女性は決して少なくないはずだ)。

 このような経験から、不審な言動をする人の気配を察したとき、刺激せず、なるべく穏便にお引き取りいただくにはどうしたらいいのか、と考えてしまう。

 30代半ば以降なら記憶にあるだろうが、1990年代に俳優・永瀬正敏さんが出演し、「愛だろ、愛」をキャッチコピーにするカクテルのCMがあった。その中の一編で、夜道をスーツ姿の永瀬さんが歩いていると、その前を歩く若い女性がチラッと彼の方を振り返り、その後駆け出していく、というものがあった。

 永瀬さんは後ろを振り返って誰もいないことを確かめ、自分が警戒されたのだと気づく。そこに「愛だろ、愛」というコピーがかぶさる。これも「警戒されちゃったよ、トホホ」という自虐型CMだ。

 筆者がこのCMを思い出して思うのは、女性は夜道でこんなにあからさまに警戒感を出せるものだろうか、ということだ。もちろん、CM上の演出に真顔でツッコむのが、やぼなのは承知している。