モスクワへの渡航は7年ぶりの3回目だったが、2週間ほど滞在した街は驚くほど進化し、ユニクロや丸亀製麺といった日本の企業も進出し、どちらも大盛況だった。

2021年9月からロシアは何が変わったのか?クレムリンの開発地区にできた公園(右)空港で中国系の人たちの防護服。感覚差に驚く(左)

 コロナへの警戒感が高かった日本と違って、マスクを着用している人はほとんどいない。だが、一部公共機関やスーパーのレジ前などではマスクの着用義務があるらしく、必要なときだけポケットから取り出したり、なんと他の人が着用しているマスクを借りたりで、「それは駄目でしょ!わーおそロシアだね!」と、知人と苦笑いをしていたのだった。

困難な状況でも大会を成功させたIBBYロシアと
コロナに負けないモスクワの公共図書館

「第37回国際児童図書評議会世界大会」は、本来2020年9月に開催の予定だったが、東京オリンピック同様コロナの世界的な感染拡大で1年の延期を余儀なくされた。それでも、海外からのリアル参加者は200人程度で通常の半分以下だった。しかし主催のIBBYロシア支部はオンラインで世界各国とモスクワ会場をつなぎ、会議や発表を行うハイブリッド開催を実施。時差や個人の使うパソコン機能の限界など障害もあったが大会は成功を収めた。

 延期やハイブリッド開催の準備に費やした時間やお金、参加者減少による大会収入減などIBBYロシア支部の負担の大きさを目の当たりにしたが、それでも子どもの未来と平和のため志を高く掲げるIBBYロシア支部の姿に頼もしさを感じることができた。

 また、国際交流基金モスクワ日本文化センターと全ロシア国立外国文献図書館が、コロナ禍の閉塞感を日本の文学で払拭させたいと始めた「新美南吉のお話『てぶくろをかいに』絵本表紙コンクール」には、4歳から62歳までの593作品が、ロシアだけでなく、スロベニア、ベルギー、フランス、ブルガリア、アルメニア、ベラルーシ、ウクライナ、ウズベキスタン、モルドバ、キルギスタン、エストニア、カザフスタン、トルコから届いた。

 全ロシア国立外国文献図書館で開催された展覧会は、その中から日本とロシアの両審査委員によって選ばれた入選作品の展示と全作品を掲載した国際交流基金モスクワ日本文化センターの図録が用意された素晴らしいものであった。

2021年9月からロシアは何が変わったのか?左)IBBY世界に各国から集まった著名作家やイラストレーター 右)IBBY大会期間中ロシアの学生たちが案内や通訳のボランティアをしてくれた

 このコンクール作品を日本の人にも見てもらいたいと、作者の新美南吉が『てぶくろをかいに』を書き上げたゆかりの地、東京都中野区の図書館関係者に帰国後作品展示の打診をしてみた。すると、図書館側からもロシア、そしてその周辺国の人々が日本の物語でつながるコンクールに共感いただき、2月1日から新開館した「中野東図書館」のオープニング展示「ロシアの人たちが描いた新美南吉『てぶくろをかいに』表紙絵展が実現することとなった。