日本は2030年までに
1980年代の黄金期に戻れるのか?

 いったん日本では達成されていた、ないしは達成する方向に向かっていたSDGs項目でも、これから先の2030年の日本ではそれが退行しそうな項目が、目標6から目標8まで続きます。

目標6 安全な水とトイレを世界中に
 日本は海に面した温帯の島国である関係で水資源は比較的豊富なのですが、今課題なのは主に自治体が管理をする上下水道インフラが、いつまで維持できるのかという問題です。世界的には水道インフラの民営化が悲惨な結果をもたらすことがわかってきているにもかかわらず、自治体によっては今から水道の民営化を進めようという動きすらあります。今現在ではなく、2030年も同じ社会であることが日本のゴールでしょう。

目標7 エネルギーを持続可能に
 日本の電力は、その4分の3が火力発電で賄われています。世界基準で見ればクリーンに近いとされるLNG発電も多いのですが、石炭火力発電もそれと同じくらいの比率を占めています。ここから2030年までの間に、どれだけ再生エネルギーを増やせるのか。日本にとっては一番難しいチャレンジなのが、この7番目の目標だと思います。

目標8 人間らしい雇用
「1億総活躍」というキャッチフレーズがありました。「そんなこと無理だよ」と冷ややかに見る向きもありましたが、実はSDGsが目指すのはそのような世界です。一人一人が活躍できていることを実感できる雇用を目指すべきだというのです。そして、日本の場合の課題がもう一つ。同一労働同一賃金の達成は、SDGsの達成すべき重要なゴールだということも忘れてはいけません。人間らしい雇用という目標は、ぜひ達成してもらいたいものです。

 日本は高度成長期を経て、1980年代に当時の世界の頂点ともいえる生活水準を達成しました。誰もが安価に水道や電力・ガス、交通インフラにアクセスでき、誰もが職場で自分の働く場所を見つけることができた時代。2030年までにその位置に戻れるかどうかが、日本の場合のチャレンジになりそうです。