“怒り”を否定せずに向き合う
受け身の達人を目指して

 まず、“アンガーマネジメント”とは、方法論とも言えるし生き方とも言える。万人に理解されやすいようにある程度体系化されてはいるが、聖人は言われなくても実践できているであろうし、“アンガーマネジメント”を知らない人であっても、その一部は体得しているであろうと思われる。

 筆者はアンガーマネジメント初心者なので、わかりやすそうな入門書を1冊読むことにした。

 これは完全に蛇足だが、Amazonというのは改めてすごい。参考にしたい本を注文しようとしたら「Kindle版 0円」と書いてあって、どうやら一部の書籍はAmazonプライム会員ならタダで読めるようである。Amazonの、いつの間にかプライム会員になっているようなシステムはいまだ許していないが、いつの間にかプライム会員になってしまった人はぜひご活用されたい。結果、筆者はコスト0円でアンガーマネジメントのなんたるか、その入り口を知ることができた。

 アンガーマネジメントは、「怒りをコントロールして有意義な生活を送ろう」という目標のもとに、自分の中に湧き上がってきた怒りの鎮め方、怒りの利用法、そもそも怒りにくい考え方を手に入れるにはどうすべきか、などを教えるものである。

「怒らない」が、必ずしもゴールではないという点に注意されたい。怒りは人間に生ずる自然な感情だと認め、そこからの向き合い方を考えるアプローチ法…これがアンガーマネジメントであるらしい。アンガーマネジメントにおいて、怒りを覚えること自体を否定はしていない。

 その基本姿勢は、「超積極的な受け身」である。アグレッシブに戦って、世の中にある、“怒り”を感じさせそうな諸要因を変えていく・やっつけていく、ということはしない。

 自分に怒りを感じさせるような要因は世の中にあまたあるが、それに「怒り」でもって反応しているのは、ほかならぬ自分自身である。つまり自分自身の認識さえ変えれば、それまで「怒り」だったものは「怒り」でなくなるかもしれない。これを念頭に、外部要因への反応の仕方を整え、磨き上げていく。外部要因に対しては徹底的に受けの姿勢だが、その受け身の達人になることを目指すのである。

 具体的には、完璧主義を手放したり、他人への期待のハードルを下げたりすることで、「許せる」と思う範囲を増やしていく。また、自分を客観視する機会を増やすのも重要である。

すぐに実践できる怒りの対症療法
訓練次第で伸びしろあり

 怒りを感じにくい精神性を構築するアプローチとは別に、怒りをやり過ごす対症療法的なノウハウもアンガーマネジメントにはある。

 まず怒りのピークは6秒で過ぎるらしいので、怒りに瞬間的に身を任せないこと。この時は1から6まで数字を数えたり深呼吸をしたりするのがまずよろしいらしいが、ほかに「目の前の物や風景をひたすら観察する」「自分の動きを口に出して細かく実況する」「自分を励ます」「前もって決めておいた、自分を落ち着かせるフレーズを唱える」などが有効らしい。

 これが、やはりなかなか難しい。何しろ、怒っている最中というのは、変な話だが怒り続けていたくなり、その怒りを手放したくなく感じるものだからである。そこに割り込んで急に「自分の実況」などをするのは、到底ばかばかしく思われ、抵抗がある。