「自分ごと化」をキーワードにして、採用活動に臨む

 新卒採用の場合、「内定(内々定)を出してから入社までの期間はどうすればいいか?」という悩みも、福重さんは人事担当者からよく聞かれるという。企業側は、内定(内々定)者をどうフォローし、入社してもらうためのモチベーションをどう維持するかに腐心しているようだ。

福重 内定・内々定を出し、内定式で承諾書を受け取っていても、内定・内々定者が他社に行ってしまう可能性はあります。それを防ぐには、「この会社で働く」というイメージを入社日まで持ち続けてもらうことが重要です。以前は、そのために内定者懇親会や先輩社員たちによる座談会などを開いたりしましたが、コロナ禍では対面でのそうしたイベントは実施しにくくなっています。オンラインでやってみても盛り上がりに欠けたり、話のネタがなくて困ったりもします。

 私が人事部の方にいつも申し上げているのは、「選考段階から内定・内々定者フォローは始まっている」ということです。まずは、面接などのコミュニケーションの場で自社のことを学生にきちんと理解してもらい、自社で働くことを「自分ごと化」してもらうことが大前提です。

 内定・内々定を出した後も同じです。自社の一員と考え、人と触れ合う仕事や業務を手伝ってもらうのです。たとえば、次年度のインターンシップのサポート役を内定・内々定者に依頼する。インターンシップに(内定・内々定者の)後輩の紹介枠を設けてもよいでしょう。内定・内々定者を「お客さん扱い」するのではなく、身内関係者として、どんどん巻き込んでいくとよいでしょう。今年度のインターンシップの対象者である24卒生は「コロナ禍1期生」で、大学の入学式もままならずに大学3年生になった世代です。何事もオンラインに慣れていて、対面の価値を認めてはいるものの、それほど大切だとは思っていないでしょう。そこを見誤って企業側が「対面!対面!」と言っても、熱量が違ったりします。就活生(24卒生)が持つ、そうしたリアルとオンラインの感覚は、今年の内定・内々定者(23年卒)も共有しているはずなので、次年度の採用活動に力を貸してもらう価値は高いと思います。

 インターンシップから内定(内々定)出し後の学生へのフォローまで、採用プロセスは、本来すべてつながっている。ところが、実際にはインターンシップ、会社説明会、面接、内々定、内定、入社までのフォローが断続的になっているケースが少なくない。学生に自社をよりよく理解してもらい、自社で働くことを「自分ごと化」してもらう――それが、採用活動に一本の軸を通すことになるだろう。

23卒採用の選考で、経営者や人事担当者がハマりがちな落とし穴