八百長疑惑の落とした「2つの影」

 日本サッカー界で「八百長」という言葉が飛び交うのは約7年ぶりだった。

 就任間もない日本代表のハビエル・アギーレ監督に、スペインのクラブで監督を務めていた時期の八百長疑惑が浮上。2014年12月中旬に同国の検察当局から告発され、翌年1月には予審裁判所に受理されたと一斉に報じられた。

 議論を重ねたJFAは15年2月、潔白を主張していたアギーレ監督を解任した。推定無罪の原則を考慮せず、考えられ得るリスクを排除する方針を選んだ。アギーレ監督はその後の裁判で、証拠不十分で無罪になっている。

 それだけ「八百長」という言葉に敏感だったJFAだからこそ、鈴鹿に科した懲罰は甘いし、サッカー界へ大きな“影”も落とすと言わざるを得ない。

 一つは鈴鹿の未来への“影”だ。独自に調査してきたJFLが「懲罰の対象になり得る行為が発覚した」と発表し、JFAに報告したのが今年2月下旬。その際にJリーグも昨年2月に鈴鹿に認定した、J3昇格への前提となる百年構想クラブ資格を解除条件付きで停止にしている。

 Jリーグは「不適切な金銭の支払いなど、ガバナンス上、問題があるとみられる行為が複数見つかった」と理由を説明。解除条件には「ガバナンス体制の改善」などが掲げられ、6月の理事会までに条件が満たされているかどうかを判断すると発表した。

 しかし、JFLによる八百長行為未遂の認定が状況を大きく変えた。

 Jリーグは4月下旬の理事会で、鈴鹿に対する百年構想クラブ資格失格を含めた判断を下す方針を固めた。実際に失格になれば、今シーズンのJFLで優勝してもJ3には昇格できない。

 もう一つは、サッカーを含めたスポーツ界全体への“影”。鈴鹿が6日に発表した謝罪文の中にこんなくだりが見られる。

「サッカーに限らずスポーツ対する信頼や高潔性の維持に疑義を生じさせてしまった責任の重大さを深く反省し――」(原文ママ)