「八百長試合ではない」との判定
社長・会長への処分は甘すぎ?

 収拾がつかない状況で監督とスタッフ、選手だけでミーティングが続行され、呼び戻された吉田社長が「クラブとして不正行為をしてほしいという意図は断じてない」と明言。正々堂々と戦う意思が明記された誓約書が作成された。

 誓約書は吉田社長が手書きで「クラブは選手に場合により負ける選択肢を打診したが、これを撤回し、正々堂々と戦おうと指示した」とつづった。吉田社長に続いて選手も署名した一方で5人が拒否し、仙台戦前に鈴鹿へ戻った。

 前節から先発6人が入れ替わった仙台戦は後半35分に失点し、0-1と西岡会長が例えた通りのスコアで敗れた。しかし、それまでのやりとりから、鈴鹿が意図的に負けた事情は見られないと規律委員会は結論づけた。

 スイスの専門調査機関、Sportradar社による試合の映像解析で、鈴鹿のプレーに不自然な兆候が見られなかった報告も受けた。八百長行為の指示は未遂に終わったが、だからといって不問に付されるわけではない。

 FIFAの懲罰規定は、八百長行為に対して最低5年間のサッカー関連活動禁止と最低1000万円の罰金を科している。未遂行為でも処罰対象となる点を踏まえて、規律委員会は鈴鹿に500万円の罰金を科し、仙台戦を0-3で鈴鹿の敗戦扱いとする没収試合とした。

 さらに仙台戦前日の塩見氏の指示が、懲罰基準の「試合の経過、結果に不当に影響を与え、操作する行為」に該当すると判断。2年間のサッカー関連活動禁止を科した。

 塩見氏は規律委員会へ提出した陳述書で、最初のミーティング後に、吉田社長とともに具体的な失点方法を含めた八百長の指示を西岡会長から受けたと述べた。しかし、JFLによる当事者への聴取でその事実は認定されなかったという。

 ただ、元をたどれば西岡会長の発言が、八百長未遂行為を誘発した事実は残る。規律委員会も「サッカー界とこれに関わるさまざまな関係者の名誉と信用を毀損し、その秩序風紀を乱す行為」と西岡会長の責任の重さを指摘した。

 しかしながら、同会長への懲罰はわずか3カ月間のサッカー関連活動禁止だった。

 吉田社長にはさらに短い1カ月間のサッカー関連活動禁止が科された。仙台戦前日のミーティングで塩見氏を監督する立場にありながら、言動を止めなかった不作為の責任は免れないと規律委員会が批判したにもかかわらず、である。

 一連の騒動は昨年末、すでに退社していた塩見氏が自身のツイッターを頻繁に更新。西岡会長から八百長行為を命じられたと告発した一件が発端だった。

 告発前に塩見氏から2500万円を要求された鈴鹿が、関係を断ち切るために支払いに応じた事実も判明。しかし、さらに5000万円を要求されたと逆に塩見氏を告発し、警察に相談する騒動に発展した。