過去のW杯でもあった八百長疑惑
今回の事態でサッカーへの不信感が再燃?

 11月にはカタールワールドカップが開幕する。物議を醸した日本対ポーランドよりもはるか以前に、実はワールドカップで八百長を疑われる試合が堂々とまかり通っていた。

 代表例が78年アルゼンチン大会。2次リーグ最終戦にて4点差以上で勝たなければ敗退するアルゼンチンが、ペルーから6ゴールを奪取。得失点差でブラジルを抜いて決勝へ進んだ一戦は、アルゼンチンの軍事政権によるペルーへの関与が疑われた。

 さらに82年スペイン大会の1次リーグ最終戦では、開始早々に西ドイツが先制した後は対戦相手のオーストリアとともに淡々と時間を消化。ともに2次リーグへ進出し、初戦で西ドイツを破る大金星を上げたアルジェリアを敗退させた。

 78年大会のアルゼンチン対ペルーはブラジルが、82年大会の西ドイツ対オーストリアはアルジェリアが、それぞれ全日程を終えた後に行われた。批判が殺到した中で、86年メキシコ大会からグループリーグ最終戦が同日、同一時間帯で行われている。

 現在はFIFAがコンプライアンス順守を叫び、Sportradar社に代表される調査機関が監視の目を光らせ、ファン・サポーターの視線も厳しさを増した。だからこそ、言語道断である鈴鹿の行為は、未遂とはいえサッカーへの不信感を再び生じさせかねない。

 今シーズンから55歳のレジェンド、FW三浦知良が加入した鈴鹿は、ホームだけでなくアウェーでも従来の観客動員記録を更新するフィーバーを巻き起こしている。

 昨シーズンの鈴鹿のホーム最多観客動員数は853人だった。一転して今シーズンはラインメール青森との開幕戦で歴代最多の4620人を集め、JFAから懲罰を科された直後の4月10日のホンダロックSC戦も1420人を数えた。

 公式ホームページに謝罪文が掲載されただけで沈黙が貫かれる状況は、恥ずべき不祥事が明るみになってもスタジアムへ足を運ぶファン・サポーターを冒涜(ぼうとく)している。それだけでなく、八百長の指示を毅然(きぜん)と拒否した姿勢が規律委員会に「敬意を表する」と称賛された当時の監督や選手、そして懸命にプレーしているカズを始めとする現在のチームをも裏切っているのだ。