コロナ禍で市場環境が激変した13業界について、それぞれ倒産危険度ランキングを作成した。特集『廃業急増!倒産危険度ランキング2021』(全23回)の#21では、化学業界を取り上げる。21社が“危険水域”に入り、大手総合化学メーカーも2位にランクインした。(ジャーナリスト 名古屋和希)
消費減が経営リスクに直結
化学業界本格回復には時間も
プラスチックや衣料などの日用品、フィルム・溶剤などの工業製品向けに幅広く素材を供給するのが化学業界だ。だが、海外に比べ、小規模・低収益という構造問題を抱え、市況の急激な変化や消費の低迷といった要因に業績が左右されやすい。新型コロナウイルスの感染拡大はそんな業界を直撃した。今回の化学業界の倒産危険度ランキングはその衝撃の大きさを映し出している。
コロナ禍で2020年上期は世界的に消費が落ち込んだ。日本も例外ではない。例えば、国内の20年1〜6月の自動車の新車販売台数は前年同期比で約2割減少。自動車向けなどに製品を供給する化学メーカーは軒並み影響を受けた。
同年下期以降は持ち直しの動きが一部で見られるものの、いまだ感染拡大が続く中で、需要の本格回復にはまだ時間がかかるとの見方は多い。
化学業界の倒産危険度ランキングで前回(昨年)に続き1位となったのが戸田工業。同社は、電気自動車(EV)の開発競争の激化を背景に、主力の磁石材料の売り上げを伸ばしたものの、コロナ禍による中国を中心とする市場での需要落ち込みが足を引っ張った。
21年3月期は機能性顔料事業の固定資産の減損処理などで、純損益は41億4200万円の最終赤字(前年同期は52億8500万円の赤字)と2期連続で赤字を計上。自己資本比率は21年3月期に19.5%となり、前年同期比6.7ポイント悪化した。
ランキングでは、同社のように景気の動向で経営リスクが顕在化しやすい小規模なメーカーが目立つ。一方、コロナ禍による環境激変は、大手にも大きなインパクトを与えた。今回、総合化学メーカーが危険水域に入ったのだ。