崩壊する「理想の自分像」

私は、そのときはじめて、私が認識していた以外の感情に気がついたんです。私は、自分を一番知っているのは私自身に他ならないと思っていました。でも、その時にブワッと一気に、涙と一緒に、どこに隠れていたのか、私の知らない感情が流れ出してきたのです。

がんばりたくない。やめたい。就活嫌だ。なんでこんなことしなきゃいけないの。なんで無理しなきゃいけないの。なんで? なんで? なんで? なんで、こんなに頑張らなきゃいけない? これ、私が必死にやらなくちゃだめなことかな? 私、別に、もう、ここまで苦しい思いして、就活なんて、しなくていいんじゃないのかな。ああ、もう、嫌だ。死ねばいい。みんなみんなみんなみんな、死ねばいい。人間みんな死ねばいいのに。私の味方じゃない人間以外、みんな死ねばいいのに。いなくなれいなくなれいなくなれいなくなれいなくなれいなくなれいなくなれ!!!!
私のことを愛してくれない人間なんか、みんな、いなくなれ!!!!

本気でそう思っている自分に、自分が一番驚きました。

私が知っている「自分」は、決してそんなことを考えるような子じゃなかった。全然、違いました。私は、もっと優しくて、みんなに思いやりをもって接することのできる人間でした。なのに、今ここにいる、リアルな私は、「死ね」と思っていました。悪い感情を持っていました。他人に対して。苦しい自分の思いを吐き出したくて、それを他人にぶつけました。周りにいる人間みんなが憎いと思いました。消えろ、と思いました。

もう、なんなの、と思いました。
なんなの、この感情。何で今更、こんな感情が出てくるの?
ふらふらして、真っ暗になりました。吐きそうになりました。
信じられない。信じられない。
自分のことが、信じられない。
っていうか、わからない。
自分って、何? だれ?

私が今まで知っていたはずの「自分」は、私の真隣に、本当にすぐ隣にいて、私にいつでも微笑んでくれるような存在でした。

でも、それが、その瞬間から。
気が付いたらもう、ずっと遠く。
知らないうちに、かすんで、ぼんやり、見えなくなる。
遠くに、行ってしまったんです。
今となっては、まるで、一番の敵みたいに思えるんです。あの子のことが。
あれから、そういう意識を、ずっと持っています。

私は、私のことを信用できない。「自分」は、ますます遠くに行って、見えなくなってしまいました。霞んで見えない。どんな表情をしているのかも、どんなことを考えているのかも、全くわからない。

何もわからない。あの子が、何を考えているのか、私には、計り知れません。だから、今も私は、自分のことを、信用できないのだと思います。自分がコントロールできない存在。動かそうとしても、動かすことのできない存在。それが自分。

だから、私は、自信がありません。自分のことを信じることができません。自分を常に、疑っています。

自分を疑って、他人を疑っているんです。常に。

私のことを信じることができないから、常に、「これを思っている自分は、本当だろうか?」「私は本当にこの人に対して、優しくしたいと思って優しくしてるのか?」「私がとっているこの行動は、本物?」などと、いろいろ頭の中でぐるぐるぐるぐる、考えているのです。