それに続くディスカッションでは、東京ガス エネルギーソリューション本部ソリューション共創部 部長の清水精太氏をモデレーターに、日本のエネルギー問題の展望を共有した。最初のテーマに挙がったのは、脱炭素社会実現における低炭素エネルギーとしての天然ガスの重要性についてだ。橘川氏は、責任あるトランジション戦略について触れた。

 「どうやって実現するのか、ロードマップを示すこと、具体的なトランジション戦略を持っているかが大切です。カーボンフリー火力のポイントは、水素とアンモニアになりますが、両方とも今のところ天然ガスからつくられています。おそらくグリーン水素・アンモニアだけでは足らず、ブルー水素・アンモニアの役割も大きくなると思います。そこで大切になるのがCCS(二酸化炭素の回収・貯留)ですが、これに対して、天然ガス田を開発している知見が役立つと考えています。つまり、天然ガス自体も重要なのですが、その先の水素とアンモニアにつなげていく橋渡しとしても、天然ガスは重要な役割を果たすのではないでしょうか」(橘川氏)

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 続いて清水氏は、輸出などの経済貢献や雇用面など、国情を踏まえたグリーンリカバリーの留意点について、翁氏にまず意見を求めた。

 「国ごとにインフラや自然環境などが大きく異なります。置かれている環境に応じた努力の在り方があると思っています。先進国と比較すると、中国や東南アジア、インドはかなり製造業が多く、集積地が多いので脱炭素の影響というのは大きいはずです。一方、欧州諸国はサービス産業化が進んでいるので、アジアほど影響を受けないかもしれません。ただ、アジアについては、これからEVや再生エネルギーへの設備投資が大きくなり、それに伴って産業構造も変わっていくはずです。日本においては、風力や太陽光などによるエネルギーの大幅拡大は困難な現状にあります。国益にかなうよう、しっかり戦略的に進めていく必要があると思います。その意味で、日本やアジアはトランジションが重要です。ただ、ロードマップがまだ明確ではないと感じています。GXというのは経済安全保障にも関わるアジェンダです。安全保障、エネルギー、経済環境、こういったことを横断的に考えていく視点がこれからますます求められると思います」(翁氏)

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