カーボンニュートラルへの移行ロードマップ

 東京ガスグループが掲げる「カーボンニュートラルへの移行ロードマップ」では、「天然ガスによる低炭素化」「ガスの脱炭素化」「電力の脱炭素化」という3つの柱のもと、ガスでも電力でも脱炭素技術に強みをつくり、消費者(ユーザー)先での実装拡大を通じてカーボンニュートラルへの移行をリードする考えだ。2030年には1700万トンのCO2削減貢献を成し遂げるという目標も掲げている。

 続いて内田氏は、ロードマップを支える3つの軸について解説した。その1つとして、まずは「天然ガスによる低炭素化」を挙げる。トランジション期においては、石炭・石油から都市ガスへの燃料転換、コジェネレーションなどの高効率機器導入に加え、スマートシティー化・カーボンニュートラルLNG・CCUSにより国内外の消費者(ユーザー)先のCO2削減に貢献。これらを通じて低・脱炭素化の社会的コストを抑制しつつ、エネルギー安定供給の責任を果たし、着実な移行をリードする。

 次に、「ガスの脱炭素化」に向けて、メタネーション(CO2と水素からメタンを合成することでCO2を再利用し、CO2ネット・ゼロを実現する技術)や水素製造を自社コア技術として確立。官民合わせた協力体制や海外プレーヤーとの連携のもと、社会実装に向けたカーボンニュートラルメタンバリューチェーンを構築する。

 最後に「電力の脱炭素化」では、再エネ原電の開発からオペレーション&メンテナンスの全段階、そして発電から売買までを手がける東京ガスグループの強みを生かしながら、再エネバリューチェーンを構築。収益性を確保し、2030年までに太陽光・陸上風力・バイオマス発電などにより、国内外の再生可能エネルギーの電源取扱量を、600万キロワットまで拡大する計画だ。

 内田氏は「今後よりいっそうGXを加速していくため、東京ガスグループは脱炭素を含む成長領域へ投資割合をシフトし、2兆円規模の投資を行っていきます。GX経営によるポートフォリオ転換と、それに伴うボラティリティー体制や企業価値の向上により、お客様、社会、株主の皆様の期待に応えていきます」と語り、オープニングセッションを締めくくった。

 続く特別セッションでは、2人のゲストを招いた。

 ドイツのエネルギー大手、Uniper(ユニパー)のエグゼクティブバイスプレジデントのグレゴール・ペット氏は、「欧州における エネルギー市場の動向」の中で、カーボンニュートラル達成に向けては、各国の事情や地域の特性を反映した多種多様なパスが存在することに言及した。ユニパーは、「2035年までに欧州でのカーボンゼロ」を宣言し、EUにおけるGX先進企業として一躍注目を集めている企業である。

 また、特別セッションの2つ目「サステナブルファイナンス 市場拡大のカギ」をテーマに、BNPパリバ証券株式会社 グローバルマーケット統括本部 副会長、チーフクレジットストラテジスト、チーフESGストラテジストの中空麻奈氏が、世界的なサステナブルファイナンス市場の活況を認識し、日本市場創設に向けたアクションが必要と聴衆に訴えた。