日本経済への下押し圧力は顕著に
円売り圧力は強まるだろう

 金融政策の方向性の違いは、今後の実体経済と金融市場の展開に大きく影響する。

 まず実体経済に関して、米国の利上げによって世界経済の減速は鮮明となるだろう。現時点で米国は唯一、世界経済の中で堅調な景気回復ペースを維持している。しかしFRBが金融政策の正常化を急ぐことで米国では金利が上昇し、個人消費や住宅投資にブレーキがかかるだろう。

 また、供給制約による事業運営面でのコスト増と金利上昇による資金調達コストの増加によって、企業の設備投資は減少し、労働市場の改善ペースが鈍化する展開も想定される。

 その結果として、米国経済のGDP成長率は低下し、世界経済全体で減速懸念が高まるだろう。その中でも、内需が弱く、海外経済への依存度が高まる日本経済への下押し圧力は顕著となるだろう。

 金融市場にも負の影響が波及する。米国では、FRBによる追加利上げへの警戒を背景に、メタやテスラ、ネットフリックスをはじめとするナスダック上場銘柄への売りが徐々に増えはじめた。株価の下落は企業経営者や消費者の心理に負の影響を与え、景況感の悪化につながる。

 また、外国為替市場では、内需が弱い円の先安感が高まっている。その上にFRBおよびECBと、日銀の金融政策の方向性の相違の鮮明化が加わり、円売り圧力は強まるだろう。

 それによって懸念されるのが、わが国の輸入物価が上昇し、企業のコストがさらに増えて収益が圧迫される展開だ。その場合、本邦企業の給料は減少し、個人消費は一段と圧迫されるだろう。

 モノの値段が上昇する一方で給料が増えないという環境は、私たちにとってかなり苦しい。そうした展開が現実のものとなった時、日銀が金融政策の側面から景気の下支えを目指すことは難しいだろう。