米国とユーロ圏が
金融政策の正常化を急ぐワケ

 4月に入りFRBは、これまで以上のペースで金融政策を正常化しなければならないとの危機感を強めている。それを象徴する一つが、セントルイス連銀のブラード総裁が「0.75ポイントの利上げの可能性を排除しない」と発言したことだ。

 加えて、パウエルFRB議長は「5月に0.5ポイントの追加利上げを検討する」と発言した。FRBは堅調な景気回復ペースが維持されている間に、可能な限りの追加利上げを実施し、卸売物価(生産者物価、あるいは企業物価)と消費者物価の上昇を食い止めようと焦っているようだ。

 そうした見方から、4月下旬の米金利市場では、「今後の連邦公開市場委員会(FOMC)ごとに0.5ポイントの追加利上げが実施される」との予想が増えた。また、「6月のFOMCにて0.75ポイントの追加利上げが実施される」と予想する割合が8割程度に上昇した(4月26日の英ロンドン市場オープン時点の利上げ織り込みに基づく)。

 さらにECBの内部でも、超緩和的な金融政策の正常化を急がなければならないとの危機感が増えている。コロナ禍による供給制約にウクライナ危機が発生したことで、3月のドイツの生産者物価指数は前年同月比30.9%上昇した。これは1949年の統計開始以来、最高の上昇率だ。エネルギー資源価格上昇のインパクトは大きい。

 各国の需要が不安定なので生産者物価との乖離(かいり)は大きいものの、ユーロ圏全体で消費者物価指数も上昇傾向にある。物価上昇を食い止めるために、独連銀(ブンデスバンク)をはじめ、スペイン、ラトビア、ベルギー出身のECB関係者から「7月の利上げはあり得る」との発言が増えはじめた。

 これまで、第1次世界大戦後の「ハイパーインフレの恐怖」が強いとされるブンデスバンクの関係者から、金融緩和策が長引くことへの懸念が示されることは多かった。それが今回は、南欧出身のECB関係者などからも、早期の利上げを支持する考えが増えている。ECBの金融政策が急速かつ大きく転換する可能性は高まっている。