Netflix、初めての加入者減少と株価急落

 同じ頃、Netflixは2011年10月のサービス開始以来、初めて加入者が減少したことを発表した。2022年第1四半期決算で、同四半期に20万人の加入者が減少し、これを公表した4月19日に時間外取引でNetflix株の多くが売りに出され、株価は20~30%ほど急落した。

 メディア業界のゲームチェンジャーとして成長を続けたNetflixは、依然として世界最大のSVODサービスであり、全世界の加入者数は2億2160万人に上る。長期的に加入者の大部分を本国のアメリカ以外から得ることを目指しており、成長のプラス要因は残されている。

 一方、勢いに陰りも出ている。今回の加入者減少要因としてNetflixはウクライナへの侵攻に対応したロシアでのサービス停止による70万人の加入者減や、アカウント共有問題などを挙げていたが、それ以上に影響を受けているのは動画配信市場の変化だ。

需要が伸びるAVODやFASTチャンネル

 相次ぐM&Aトレンドの中で、コンテンツブームを生み出す資金力を増強し、D2Cのグローバル計画を進めている。さらに、SVODサービスだけでなく、AVOD(Advertising Video On Demand、広告動画を掲載する代わりに視聴者は無料で動画を見られるサービス)の需要が伸び、AVODの進化系である新興サービス「FASTチャンネル」の注目度も高くなっている。MIPTVに登壇したイギリス調査会社Ampere Analysisリサーチディレクターのガイ・ビッソンはこのFASTチャンネルについて「アメリカ家庭におけるFASTチャンネルの利用率は17%(2020年)から34%(2021年)に増加し、目覚ましい成長を遂げている」と報告した。

 無視できない状況の中で、これまで広告付きサービスに対して否定的だったNetflixも検討する意向を示した。早くも2022年内導入を示したNetflix幹部による内部メモがあることについて、NYタイムズが報じている

 これまでのNetflixの先行性が、今後どこまで有利に働くかは未知数なところがある。イーロン・マスクのTwitter買収が成立した際の影響力は予測不可能であり、ワーナーメディアとディスカバリーも必ずや新たに仕掛けていくはずだ。誰がゲームチェンジャーになってもおかしくない状態なのである。