首位JA石川かほくの特徴は
農業に対する“当事者意識”の高さ

 今回首位に立ったのはJA石川かほくだ。農家からの支持率が100%だった他、「役員のビジョン」の評価項目で全国2位、「農畜産物の販売」1位、「生産資材の購買」1位、「農畜産業への融資」1位、「新規就農支援」2位などと農家から高い評価を得た。

 JA石川かほくの特徴は農業に対する“当事者意識”の高さにある。農家のリタイアで耕作放棄地が広がるのを防ぐため、子会社のJAアグリサポートかほくは50ヘクタールもの農地を組合員らから引き受け、飼料用米などを作ってきた。

 担い手農家アンケートに回答した組合員は「担い手農家の担当職員(TAC)に良い人材がいる。子会社を通じて新規就農支援を行っていることも評価できる」とコメントした。

 JAアグリサポートかほくでは、「ルビーロマン」などのブドウを生産したい就農希望者を2年間雇用してベテラン農家の下で研修を受けられるようにすることで将来の担い手農家を育成している。

 前回の31位から2位に躍進したのがJAふくしま未来だ。会長の菅野孝志氏は全国の農協を束ねる全国農業協同組合中央会(JA全中)の副会長を務めている。“JA全中幹部兼任の会長”が率いる農協がランキング上位に食い込むのは異例のことだ。

 組合員は菅野氏について「東日本大震災からの農業の復興、農協の合併による経営の立て直しに尽力した」と評価した。

法人と敵対しない
JAえちご上越やJA鶴岡が上位に

 3位のJA秋田ふるさとはJA支持率ランキング上位の常連だ。

 JA秋田ふるさとは本特集の#5『農業経営で「使える&期待外れ」ツールランキング2022!ソフトバンクが農業界の風雲児に名乗り』で紹介したソフトバンクの「e-kakashi」をコメの生産に使うなどテクノロジーの活用にも積極的だ。水田に設置したe-kakashiで気温などをモニタリングし、病害虫の発生リスクを早期に察知するなどして安定した生産を実現している。

 山形県のJA鶴岡は農薬を減らした農業を普及させることで、農産物販売の利益率アップにつなげてきた農協だ。

 本編集部が選定する「中小キラリ農家」1位だったYamagata DESIGN AGRI(詳細は本特集の#10『「すごい中小農家」ランキング【ベスト20】1位は三井不動産から転身した山形県の“新星”』にメロンの販売を一部委託するなど協業している。急成長する農業法人と距離を置いたり、敵対したりする農協が少なくない中、法人と協力関係を築いていることは評価に値する。

 同じく、新潟県のJAえちご上越は本編集部が選定する「レジェンド農家」8位の田中ファームのコメの販売の大部分を請け負っている。田中ファームは建設会社である田中産業の社長が私財を投じて運営する大規模農場であり(2021年は230ヘクタール、22年は300ヘクタールでコメを生産)、農業界においては異質な存在だ。

 農業の新たな主役をどうサポートしていくかも、農協に課された重要な課題といえる。

Key Visual by Noriyo Shinoda, Graphic:Daddy’s Home