リース会計の新基準適用で財務が悪化する企業が続出しそうだ。オペレーティングリースの資産計上が2028年3月期から始まる。同リースを多額に利用している企業にとっては、資産の増加、自己資本比率低下、総資産利益率(ROA)などの効率性指標の低下といった財務悪化につながる。特集『激震!新リース会計 財務悪化リスクランキング』(全9回)の#1では、リース会計の新基準の影響が大きい小売業界で、財務悪化リスクの高い企業を独自試算でランキングした。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
店舗の建物や土地が
オペレーティングリースの対象
小売業に属するスーパー、専門店、外食などの企業にとって店舗が事業展開に欠かせない存在であることは言うまでもない。
店舗、そして店舗が立地している土地を自社で購入、所有すれば当然、その企業のバランスシートに計上する。
これまでは、店舗や土地を他の所有者からオペレーティングリースの形で賃借していた場合は、リース料を損益計算書に費用として計上するだけで、バランスシートに計上する必要はなかった。
しかし、日本企業の会計ルールを策定する企業会計基準委員会は9月3日、海外の会計基準とそろえるため、企業が保有するリース資産と負債を全てバランスシートに計上するという新基準を議決した。
新ルールが始まる2028年3月期から、オペレーティングリースを資産として計上することが義務付けられる。そのとき、企業のバランスシートはどう変化するのか。
現在は、決算期末時点で、オペレーティングリース契約に関わる未払いのリース料を、未経過リース料として財務諸表の注記に記載することになっている。
資産計上するに当たっては、この未経過リース料の額そのままが計上されるわけではない。かいつまんで言えば、未経過リース料を一定の割引率で割り引いた現在価値をリース債務として負債に計上し、それに一定の調整を加えた額を資産として計上する。
ただ、未経過リース料を資産として加えることで新リース会計基準適用後のおおよその姿を測ることはできる。
企業によっては資産や負債が急増し、自己資本比率の低下など財務比率の悪化に至るケースもある。
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