生前贈与#2Photo:PIXTA

生前贈与の節税術を封じる税制改正が継続審議となったことで、節税できるチャンスが増えた。相続税対策の王道といえる生前贈与の節税効果は、「毎年贈与」でさらに高めることができる。そして、非課税枠の年110万円を超えた贈与で、絶大な威力を発揮する。特集『生前贈与 節税チャンスは今のうち!?』(全7回)の#2では、毎年贈与の節税効果を解説する。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

「週刊ダイヤモンド」2022年4月30日・5月7日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

生前贈与「節税チャンス」が1回増えた?
「毎年贈与」で増える節税効果

「どうして税制改正の話題を教えてくれなかったのよ。節税できるチャンスを1回逃しちゃったじゃない」

 2022年度の税制改正大綱では見送りとなった相続税と贈与税の一体化。今年1月、ある銀行の営業担当者が、顧客である資産家の女性にこの話題を振ったところ、興味津々に食い付いてきた。ところが話を聞き進めるうちに女性の顔色が変わり、ついには怒ってしまったのだという。

 相続税の節税対策の基本は、課税対象となる資産を減らすことだ。そのため、贈与税の非課税枠110万円の範囲で毎年生前贈与する節税術は、相続税対策の「王道」として有名だ。

 例えば、2人の子どもに毎年110万円ずつ10年間贈与を続ければ、資産を2200万円減らすことができる。実際に節税効果を試算してみよう。

 配偶者に先立たれ、1億円の資産を持ち、子どもが2人いる親が亡くなったときにかかる相続税は770万円だ。

 これが、10年間にわたって子ども1人につき毎年110万円を生前贈与して資産が7800万円まで減った場合、相続税は440万円。差し引き330万円節税できたことになる。

 同様のケースで資産3億円だった場合、贈与を何もしなかったときにかかる相続税は6920万円。一方、10年間贈与した場合の相続税は6040万円となり、880万円得したことになる。

 ここまでは生前贈与を活用した節税術として広く知られた話だ。

 贈与税は累進課税で最大55%の税率がかかるため、贈与税が発生するような贈与は損だと考えている人も多いかもしれない。

 しかし、資産を多く持ち相続税率が高い人は、たとえ110万円を超える贈与をして贈与税を支払ったとしても、贈与額によっては相続税が減る効果の方が大きく、節税できる場合がある。