生前贈与#1Photo:Diamond,PIXTA

2021年12月に与党がまとめた22年度の税制改正大綱では、相続税と贈与税の一体化は見送られた。しかし、近い将来に相続税対策の王道である生前贈与が“禁じ手”になる公算は大きい。相続や贈与のルールはどう変わるのか?特集『生前贈与 駆け込み相続術』(全19回)の#1では、自民党の税のキーマンで前税制調査会長、甘利明衆議院議員を直撃し、見直しの方向性を聞いた。(ダイヤモンド編集部編集委員 名古屋和希)

生前贈与が「禁じ手」に!?
「非課税枠」の見直しも?

「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度の在り方を見直すなど、格差の固定化防止等の観点も踏まえながら、資産移転時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める」

 与党が2021年12月にまとめた22年度税制改正大綱には、こんな一文が盛り込まれている。その言わんとすることは、相続のルールを一変させ、相続税対策の王道たる「生前贈与」を“禁じ手”にすることで相続税の大増税を図る、という意味だ。

 累進性の高い相続税の節税対策の肝は「課税対象となる財産を減らす」ことにある。生前贈与は相続税対策の王道として、資産家ら富裕層だけでなく、都市圏に自宅があることで少額ながら相続税が発生するような会社員にまで広く活用されてきた。

「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める」――。

 実は、20年に取りまとめられた21年度税制改正大綱でも上記のような一文が盛り込まれ、幅広い層に動揺が広がっていた。最速の導入が懸念されていた22年度税制改正大綱は、冒頭のような表現となり、相続税と贈与税の一体化は見送られた。

 しかし、「贈与税の非課税措置は、限度額の範囲内では家族内における資産の移転に対して何ら税負担を求めない制度であることから(中略)不断の見直しを行っていく」といった、21年度の大綱よりも踏み込んだ文言も盛り込まれた。

 これは贈与税の非課税枠である110万円の縮小を示唆するものといえる。一体化に向けた動きはさらに一歩進められた格好といえる。

 最速となる23年度の改正なら残された生前贈与のチャンスは21年を含めて残り3回となる。いずれにしろ、節税対策としての生前贈与が封じられる方向へ、大きくかじを切ることは間違いなさそうだ。

 では、相続税と贈与税のルールは具体的にどう変わるのか?今回、ダイヤモンド編集部は22年度税制改正大綱の取りまとめを主導した自民党前税制調査会長、甘利明衆議院議員を直撃。甘利氏の発言からは、そう遠くないうちに実現する一体化後の相続税・贈与税の絵姿がくっきりと浮かび上がった。