盛り上がりの一方で「食の安全」が置き去りに

 このように、韓国の食の質は2000年代に大きく向上した。そして前述の通り、韓国の食材は国内市場だけでなく、海外の市場に活路を見いだしており、まだまだ伸びしろがあると期待できる。しかしその半面、欠点があることもまた事実である。それは「食の安全」という点についてだ。

 昨年、ネット上に拡散された動画に「中国の裸キムチ」というものがあった。中国のとあるキムチ製造工場で大量の白菜が漬かった大きな水槽に上半身裸の男性が入って作業をしたり、さびついた掘削機で白菜が持ち上げられる様子が映し出されたりというもので、韓国で波紋が広がった。

 さらに今年3月にはキムチ製造の大手である漢城(ハンソン)食品の不衛生な工場でのずさんな製造実態が明るみに出て、非難を浴びた。漢城食品のキムチは海外にも輸出されていたこと、さらに代表であるキム・スンジャ氏は、国から分野ごとに優れた技術者に与えられる「大韓民国名匠」「食品名人」の称号まで受けていたというのだからあきれるほかない。

 このように韓国の大手食品企業による不祥事について、国民からも「恥ずかしい」「中国のことを非難したり、笑ったりできない」「消費者をバカにしている」「大手だからといって安心はできない」といった声が上がっている。前述のように、2000年以降、韓国で外資系企業の進出が相次いだことで国民の価値観も変わったことに加え、サービス業に対する概念も急速に変化を遂げた。このため、食品を初めとする商品の選択肢も増え、食や生活の不便さも少なくなっていることを実感させられる。しかしその半面、前述のような大手食品会社の不祥事がたびたび起こってしまうことは残念だし、このあたりはまだまだ改善の余地があると言える。

 海外に市場を広げるのはいいことだが、「選ばれ続ける商品」というものは、何よりも消費者からの「信頼」の上に成り立つものだ。「信頼」という点では、韓国の商品にはまだまだ疑問符が付くことは否めない。韓国食材の人気の高まりは良いことだが、安全・安心という点を改善していくことこそが喫緊の課題だろう。