令和のキャリア形成は「転職が当たり前」
コンサル経験者との相性抜群

(2)コンサル業界に就職することでどのようなスキルが身に付くのか?

 学生のコンサル人気の理由の一番目にくるのは、「転職スキルが身に付くこと」です。

 ランキング上位のコンサル以外の5社である三井物産、三菱商事、三菱地所、ソニーグループ、富士フイルムは、たとえ今のような時代であっても本人が望めば生涯勤務することが可能な大企業です。一方でコンサル業界の場合、10年後に自分がそのままコンサルとして在籍しているかどうかはわからない。非常に流動性が高い業界です。

 今でもよく覚えているのですが、1985年に当時学生だった私が最初に入社したコンサルティングファームでは、エントリーシートに「将来の希望職種」という記入欄がありました。

 別に、コンサル会社は応募する学生の将来の希望職種を知りたいわけではありません。要するに、暗に「長居する会社じゃないんだよ」と応募時点でくぎを刺していたわけです。

 20代、30代で少しずつ転職を経験しながらキャリア形成をしていくのが当たり前の令和の時代では、就職することでスキルが身に付くことは重要な魅力です。コンサル以外でいえば、総合商社もソニーグループも、同様の魅力があります。

 企業としては正念場を迎えている楽天グループが人気ランキング上位に来るのも、学生にとってはスキルが身に付く職場という理由でしょう。

 この前提に立つと、コンサル会社に入社して身に付く最大のスキルは「ビジネスの世界の構造が理解できる」ことでしょう。

  私が30代になった頃、コンサル会社に、同世代で大企業に就職した仲間が次々と中途入社してきました。彼らと話をしてみると、コンサル会社に転職したきっかけは、社会人最初の10年で得られる知識に差を感じたことが大きかったようです 。

「企業が成長するためには投資することが必要」
「勝つためには製品サービスに優位性が必要」
「コスト競争では規模と生産性が重要」
「高収益のためには、川上川下の取引先との力関係が重要」

 コンサルから見れば、上記はすべてのビジネスに共通する構造です。

 この構造に基づいて企業は商品開発をしたり、ITを導入したり、営業活動をしたり、新ビジネスに取り組んだりします。しかし、大学を出て大企業に入社して最初にこういった具体的な活動から社会人を始めると「なぜ、なんのためにやっているのか?」を俯瞰して理解するまでに時間がかかるものです。

 一方で、コンサルから社会人を始める弱点は、ビジネスの細部やリアリティーの部分がおろそかになりがちなことです。このあたりは、どちらを先に学ぶかということでしょう。

 多くの場合、先にコンサルから始めると転職する際にまったくの異業種であってもその業界の構造を理解するのが早く、結果として転職後にその業界の細部を学んでいく中で活躍の場を見つけていきやすいようです。