「そんなに儲かるやり方を知っているんだったら、なぜ自分でやらないの?」という笑い話がコンサル業界にもあります。

 この質問に対する伝統的でストレートな答えは、「だって、それをやる設備は持っていないから」というものです。

 もし、コンサルが新しいノウハウで石油化学業界で大儲けする方法を知っていたとしても、自分でそのノウハウを使うことはできません。それよりも石油化学業界の大企業にそのやり方をささやいたほうが、よほどお金を稼ぐことができます。

 ところが、まったく新規の世界で新たに少額資本で早い者勝ちで勝てる時代が来たら、そのときはコンサルをやるよりも自分でやったほうが儲かるようになります。今、それに相当する業界がYouTuberですし、近未来でいえばメタバースがそうなるかもしれません。

コンサルの就職人気バブル崩壊はいつ?「最悪シナリオ」を現役コンサルが予測本連載の著者、鈴木貴博氏の近著『日本経済 復活の書 2040年、世界一になる未来を予言する』(PHPビジネス新書) 22年6月16日発売予定

 さらに言えば、そういった新しい世界を作るプラットフォーム企業としてのGAFAM(グーグル、アマゾン、メタ=旧フェイスブック、アップル、マイクロソフト)がコンサルを経営参謀として雇うかどうかは疑問です。

 もちろん、彼らが人手不足から手足としてコンサル会社をプロジェクト内で雇うことはあるでしょう。

 しかし、戦略を彼らが作り、ノウハウも彼らが最もため込んでいて、コンサルがアドバイスできるルールすらプラットフォーマーのルール変更ですぐに陳腐化するような時代にはコンサルの活躍余地は小さくなります。

 これが今、世界で徐々に起きつつあることで、世界は巨大なプラットフォーマーがビジネスのルールを作り、その下で、無数の小資本の個人が知恵とスピードで巨額の利益を得られるようになる時代が本格的に来るかもしれません。

 そのような時代がもし世の中の大半を占めるという時代が到来するとしたら、そのときはコンサルではない何か別の企業に就職したほうが、その後のキャリア形成にプラスになるかもしれません。

 幸いにしてまだその時代にはなっていない。しばらくはコンサル業界は安泰だというのが私の見通しです。内定をもらっている学生の皆さん、安心してください。

 さて、世の中の未来が読みづらい時代です。これからの経済復活の道筋を書いた『日本経済復活の書』が6月16日に発売されます。こちらもぜひお読みください。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)