学生と企業の良いマッチングの機会とするために

 ここまでは、企業目線でインターンシップのあり方を考えてきたが、参加する学生側は自分自身の就職活動において、インターンシップをどのように活用していくべきか。

福重  私は就活生からの相談もよく受けるのですが、そこで、私が伝えるのは「新卒一括採用におけるインターンシップは、さまざまな企業のビジネスを集中的に学べるチャンス」だということです。

 これほど、多くの企業が親切丁寧に自社のビジネスや社内の様子について教えてくれる機会はそうそうありません。企業が時間とお金をかけて、さまざまな資料やプログラムを用意し、インターンシップの場を提供しています。そうした機会を学生側が利用しない手はありません。参加の結果、自分なりに就職先を選ぶ基準やロジックを固め、企業の面接官はもちろん、自分の親などからも志望理由を聞かれたときにきちんと答えられるようになっておくことが大切です。インターンシップでの良い体験が、「満足度の高かった就活」につながることでしょう。

 また、「就活生は“読解”が大切」ということも、私は学生たちに伝えています。インターンシップと実際のビジネスは当然違います。いちばんの違いは、キャッシュフローについてです。実際のビジネスには必ずキャッシュフローが伴っており、キャッシュフローを見ることでその企業のビジネスがよりリアルに見えてきます。インターンシップに参加した際にはキャッシュフローについても自分なりに考えてみることで、より深い企業研究を行うことができ、エントリーシートを書いたり、面接に臨むにあたって、自分の言葉で志望理由を語れるようになるはずです。

 多くの企業にとって、新卒一括採用は“全社を挙げての最優先プロジェクト”だろう。そして、インターンシップは、その成否を左右するスタートラインといっても過言ではない。

福重  企業が新卒採用を成功させるためには、インターンシップのプログラムにおいて、人事部が他部門からの協力を取り付けることが大切です。採用担当者だけで成功させようしても、なかなかうまくいかず、限界もあります。また、エース級の社員ほど忙しいこともあって、暇な社員だけがインターンシップやOB・OG訪問に協力するというパターンも見受けられます。

 採用活動においても、経営トップがリーダーシップを発揮し、インターンシップは“全社を挙げての最優先プロジェクト”という意識と体制を整えるべきでしょう。その理想的なケースとして、「新卒採用のリクルーターに選ばれることが名誉」という社風が受け継がれている企業もあります。実施期間の長短を問わず、インターンシップが学生とのより良い出会いの機会になるよう、経営者や採用担当の方は、プログラムの工夫をはじめ、慎重かつ積極的に取り組んでいただきたいです。

“24卒採用”に向けたインターンシップで、企業が気をつけたいこと