なぜ、1on1が対話ではなく進捗確認の場になってしまうのか?

 2019年から首都圏統括部に籍を置く保井さんは、1on1浸透のリーダーを任された当初、少し身構える感じだった、といいます。

「首都圏統括部は、エリア統括部に比べて組織規模が大きくて、各部がそれぞれの担当領域を明確に持っています。ですから、なかなか共通課題を交換するというような文化というか、組織風土がなかったのです。難しいミッションだな、と思いました」

 つまり、ヨコのつながりが持ちにくい風土である、ということです。それでも、エリア統括部での成功事例を参考に、研修に基づいてメンバーとの1on1を実践し、さらにTeamsのチャットによる相互フィードバックも試みました。

 ただ、最初に危惧した通り、全体としてなかなか広がっていかない。それが2021年上半期の状態でした。

「これは、マネジャーが悪いとかメンバーが悪いとかそういうことではなく、もともとの構造がそうなっている、ということだったと思います」。中島さんは、こう振り返ります。

 それに加えて、上司と部下とのコミュニケーションにも、難しい一面がありました。

「首都圏は組織の大きさもさることながら、一人ひとりの時間的な余裕がなく、しかもお客様から求められる要望も、より高い。もともと1on1は実施されていたのですが、どうしても、メンバーが自由に話す、という前に、“まずこれをやって”というコミュニケーションになりがちだったと思います

 時あたかも、営業の環境はコロナ明けが見えはじめ、企業の求人意欲が回復に向かうところだったのです。これが、1on1が指示命令、進捗確認に傾く背景の1つでもありました。エリア統括部の施策がうまくはまらなかったのは、そういう背景もあったのです。

 こうした状況を背景として、1on1の浸透施策は、少し方向を変えて進みはじめました。