2on2で、他者の力を借りて自分の物事の見方を変える

 保井さんが言います。

「この先どうしようか悩んでいるとき、中島から“2on2というのが面白そうなんだけど”という話がありました。単純に部を超えた座組みをつくったところで、進展していくかどうかわからない。マネジャーが新しさを感じて、面白がって、というようにマインドチェンジすることが必要なんじゃないか、と私も感じました」

 2on2とは、埼玉大学経済経営系大学院准教授の宇田川元一さんが、著書『組織が変わる』(2021年、ダイヤモンド社刊)で紹介している対話の方法です。

 簡単に説明すると、4人で対話を行うのですが、2人ずつチームをつくり、まずAさんが自分の抱える課題について話します。それに対して同じチームのBさんが課題を解きほぐすような問いかけをします。このとき、もう1つのチームのCさんとDさんは、2人の対話を黙って聞いています。

 次にCさんとDさんが、Aさんが話した課題について自分たちの考えを話し合います。さらに、その対話について、AさんとBさんが話し合う、というように、Aさんの課題について2チームが2回ずつ対話を行います。

 最後は4人全員で、Aさんの課題について「名前をつけて」さらに考える、という流れになります。

 この2on2の意図するところは、他者の力を借りて、普段自分のとらわれている解釈の枠組からいったん離れ、物事の見方を変える、ということです。

 保井さんは、ただちに行動を開始しました。「早速、マネジャー全員に書籍を読んでもらい、リモートでマネジャーが一堂に会する統括部マネジャー会議という場で実際に2on2の実践トレーニングを行いました。それに際して2on2の目的をまとめた冊子をつくり、私と中島などによる実演の動画を見てもらいました。やってみると統括部のマネジャーからの反応もよく、4人×20チームをつくって、2on2を4回実施。そのときに、やってみての気づきや学びを必ずTeamsに投稿するというルールを設け、すべての組織長が全投稿を見る、ということにしました。すると、マネジャーたちが非常に面白がって、今までにはない学びがある、気づきがある、など前向きなコメントがたくさん出たのです」

 自分の行う1on1についてフィードバックをもらう、ということ自体が、マネジャーには新鮮な体験だったのでしょう。組織に欠けていた対話の土台をつくりながら、同時にヨコのつながりの価値にも目を向ける。首都圏統括部における2on2の真価は、そこにこそあったのだと思います。

 2on2に関心を抱いた理由について、中島さんは言います。「指示命令の文化が強い環境下では、対話は起こりにくい。でも、このやり方であれば、自然に対話ができるのではないか、と考えたのです。保井さんがゲーム的に進めてくれ、課題をモンスターに見立てて名前をつけたり、それを“2on2通信”というメルマガで流したりしてくれて、みんなが面白がってくれました」