デザイナーの職種の細分化と、スキルの多様化

――今、企業はデザイナーに何を求めているのでしょうか。

拡大するデザインの役割、デザイナー採用の現場はどう変わっているのか小宮大地 DAICHI KOMIYA/ビビビット代表取締役社長。1986年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学卒業後、セプテーニ・ホールディングスに新卒入社。人事総務部配属でHR領域のキャリアをスタート。2013年、セプテーニグループでの社内起業としてビビビットを設立。デザイナーとしごとのマッチングプラットフォーム「ViViViT」を通じて、これまでに累計2700社を超える企業のデザイナー採用を支援。

小宮 ウェブデザイナーの増加、クラウドソーシングの普及、フリーランス・副業の増加などで、デザインを個人に外注しやすくなりました。その結果、社員として採用するデザイナーには、業務委託のデザイナーとは異なるスキルが重要視されるようになっています。

 例えば、自社製品やサービスのブランド戦略・デザイン戦略が立てられるとか、市場の反応を見ながら機敏にデザインの改善策を検討できるといった、上流工程のスキルが挙げられます。ゲーム会社のオファーが、意匠重視の「デッサンがうまい人」から、企画重視の「ゲーム全体のコンセプトが構想できる人」に変わってきているといったケースもあります。

 ビジネスの上流工程にデザイナーが深く関わるようになり、社内のエンジニアやディレクターとのやりとりも増えているので、コミュニケーション力やチームワーキングの力も重視されます。

――いわゆるビジュアライズ能力の重要性は相対的に下がっているのでしょうか。

小宮 デザインの領域によっては下がった、と言った方が正確です。例えば、デジタルプロダクトのデザイン。サービスの立ち上げ期・成長期であれば、一つ一つのビジュアルに時間を割くよりも、素早いPDCAが求められることが多いです。また、そうした開発の過程で職能の細分化も進んでいます。これまでは、「UI/UXデザイナー」というUIとUXを併記した肩書が当たり前に使われていましたが、今はUIデザイナーとUXデザイナーに分けて募集する企業が増えています。

――職種・職能の細分化とともにスキルの最適化が進んでいるということですね。

小宮 そうです。ジョブ型雇用を背景として、それぞれの定義が細分化され、ビジュアライズ能力が重要な職種であれば、それを得意とするプロフェッショナルが集まるようになっているという構図です。営業職で、「インサイドセールス」や「カスタマーサクセス」などへ専門化・細分化が進んでいるのと同じ流れです。