「伝統工芸」をメインに、そこに工業のテクノロジーを隠す
という逆転の発想
二〇一六年の秋に京都で、町家を借りて、そこで成果を展示しました。
町家の中に三〇メートルもの長さの木のカウンターのような展示台を入れて、入り口から順番に成果物を並べていきました。その展示の設計も自分たちで考えました。
その時に展示していたものは、テクノロジーを前面に出すのではなく、伝統工芸の質感や触感を残しながら、テクノロジーを取り入れたようなプロダクトでした。
当時、「どうだ」と言わんばかりにテクノロジーを前面に出す家電が多かったのですが、せっかく伝統工芸と工業がセッションするのだから、そうではないものをつくりたかったのです。
伝統工芸は長い間、人が気持ち良いと感じるものをつくってきました。人の生活に寄り添ってきたからこそ、これだけ何十年、何百年と残ってきた。いわば長い時間を重ねて生き残ってきた「もの」です。
歴史を振り返り、「伝統工芸は日本のものづくりの原点」という松下幸之助氏の言葉もヒントに、「工業製品に工芸的な質を持たせる」のではなく、「伝統工芸」をメインにして、そこに工業のテクノロジーを隠す、という逆転の発想をしたのです。
「Hidden Technology」というのがテーマでした。