ひきこもり当事者の中で
精神状態や家族関係が二極化

 その参考例として、当事者団体である一般社団法人「ひきこもりUX会議」が、20年末から21年初めにかけてWeb上で行ったアンケート『コロナ禍におけるひきこもり・生きづらさについての調査2020』(回答者397人)の調査結果を紹介する。

 この調査によると、「1年前にひきこもりではなかった」203人のうち、雇い止めなどの雇用悪化や、将来の不安が高まるなどの精神状態の悪化によって、「この1年でひきこもりになった」と答えた人は、全体の24.6%の50人に上っている。

 また、現在「ひきこもり状態」にある229人のうち、コロナ禍をきっかけに「精神状態が悪くなった」「どちらかといえば悪くなった」と回答した人は計63.8%。現在「ひきこもり状態ではない」167人の計52.7%と比べると、より深刻な影響を受けていた。

 ステイホームによる家族間の緊張の高まりに加え、コロナ影響による失業者増がニュースで報じられたことで、「ひきこもりである自分が仕事に就くのはさらに難しくなるのでは」という不安感にもつながっていると、UX会議では分析している。

 筆者の所属する特定非営利活動法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」が20年12月から21年3月にかけて行った調査『ひきこもりの家族会に関する実態調査報告書』でも、コロナの影響で、本人の多くが体調不良、精神的に不安定になったという回答が数多くあった。

 例えば、本人が精神的に不安定になったケースでは、家族からこんな声が報告されている。

・私の給与が減ったことを引きこもっている本人に伝えたら、追いつめられたように就労に走ろうとした。また、家族の買い物について「無駄遣いだ」と責めてくることがあった。

・隣家の住人の在宅時間が増えたが、隣人が「庭いじり」をするたびに、本人がその物音に過敏になり、奇声を発するようになった。

・本人のアルコール量が増えてしまった。

 また、その一方で、家族関係や精神状態が「好転した」という声も届いている。